<あらすじ>
異なる国で、三人の女性がそれぞれの人生を送っている.インドでは、社会階層では生まれながらの不可触民であるスミタ.幼い娘には教育を受けさせたいという願いから、命からがら娘と町から逃亡する.イタリアでは、両親が経営する毛髪加工会社を手伝うジュリア.父の事故死がきっかけで、倒産寸前の会社をまかされてしまう.裕福な男性との結婚が解決策だと母は言うが、近くの海岸で出会った外国人に魅かれる.カナダではシングル・マザーの弁護士サラ.都会の法律事務所で女性初の管理職への昇進も目前だが、癌の告知を受ける.その事実を隠し続けるが、偶然知った同僚たちは態度を変え、昇進は今まで眼をかけていた後輩に行ってしまう.困難な状況に無我夢中で真っ向から取り組む女性達.物語は三人三様の人生が繰り広げられるが、結果として三人の運命は「髪」を通じて繋がっていく.
<ブッククラブでの感想>
「最初の部分からの読みやすさと、また映画界出身の作者だけあって、行ったこともないインドの駅での光景や、ジュリアがイタリアでインド人男性と逢瀬を重ねる海辺などは、私の心の中にも映画の様に繰り広げられる映像があり不思議でした.三人の女性には、どれも違ったレベルでの苦悩があるけれど、各々の女性が自分自身の道を見出していく強さを感じました.」
「人間は自然に打開策を見つけて生きていくことを感じることが多く、この本はそれを象徴していたかのようでした.スミタの日常は生きるか死ぬか、中東で勃発している状況と似ていて読みながら切迫感がありました.ビル・ゲイツがインドのトイレや水道を改善するチャリティの話は知っていましたが、この本を読んだときには思い出せませんでした.スミタの家族が代々してきた手袋も使わないでするトイレ掃除の様なリスクの多い仕事が少なくなることを切に願います.これついて、男友達に話したら、この階層の人の職が無くなってしまい、さらにビル・ゲイツがしているインドのトイレや下水道改善のチャリティに意味がなくなるから良くない、という感想を聞き驚きました.ともあれ、この本によって気づかされることが多々ありましたが、「スミタが髪を売り、ジュリアがその髪を加工し、サラがその髪を化学治療の後で付ける」物語の最後の繋がりの部分は「あぁ!なるほど!」と思わせられ、暖かくポジティブなものを感じました.
「三か所の異国に住む三人の女性の話が最後に髪で繋がるとても素敵な物語でした.差別や伝統的価値観による悩みと勇気ある行動を上手に紡いでいて、映画を観ているよう.インドに住むスミタの環境が一番過酷ですが、三人が自分の環境から脱出するその勇気は同じで爽やかな読後感でした.」
「この本を読んだとき、ちょうど「Me Too運動」の最中でしたが、登場人物の女性達が戦う相手は男性ではなく、彼女たちが置かれた環境と状況だと感じました.」
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