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執筆者の写真Takeaki Iida

6/16/2022 音楽家と作品への雑感「ボロディン」

第8章 アレクサンドル・ボロディン Alexander P. Borodin

(1833年~1887年、53歳没)

グルジア系貴族の血を引いているロシア国民派の所謂「五人組」※の一人で、本職はペテルスブルグ医学大学教授で化学者.作風はディレッタント(dilettare 楽しませる・楽しむ)であり作品数は少ない.29歳で知り合ったバラキレフの国民音楽に対する情熱と理想に共感してから本格的に作曲に取り組む.しかし着手から完成までに年月が掛かり、36歳で作曲した「交響曲第1番」を好評裏に世に出した後、「交響曲第2番」※①は着手から完成まで8年を要している.36歳頃に書き始めた代表作の歌劇「イゴール公」※②は、スケッチのみの第3幕と第4幕を彼の死後にリムスキー・コルサコフとグラズノフがまとめ上げて完成した.「中央アジアの高原にて」※③はアレクサンドル2世即位25周年祝賀行事のために作曲され、「弦楽四重奏曲第2番」※④は1881年に作曲された.

※①「交響曲第2番」はロシア的な重さが無く、これがロシア国民派の音楽かと思わせる明るい親しみやすい旋律が多い.ロシア的旋律にアジア的旋律が加わった長閑(のどか)さがあり、チャイコフスキー「悲愴」などとは明らかに違うことに気づく.往年の名指揮者ワインガルトナー※は、ロシアの国民性を知るにはチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」とボロディン交響曲第2番を聴けば十分と言ったそうだ.日本では音楽愛好家の間で通称 “ボロ2”と呼ばれている.


※②「イーゴル公」より “ダッタン人の踊り” は一番よく演奏される曲だが、ポピュラー音楽界では Strangers in Paradise という曲名で、スタンダード曲、ミュージカルのナンバー等で同じくらいポピュラーな名曲.


※③交響詩「中央アジアの高原にて」はロシア皇帝アレキサンドル2世の即位25周年に際して作曲された.広大な中央アジアの草原の情景描写の中にオリエンタリズムが濃厚に聞こえる.


※④弦楽四重奏曲第2番ニ長調は細かい弦の動きが良く響く、時にボヘミア的な、又時にオリエンタルな優しい調べが続く美しい曲.第3楽章 “夜想曲 Nocturne” は独奏用にも編曲され有名.


直、ボロディンについては、その生い立ちと人間性及び作品 ≪弦楽四重奏曲第2番≫ に関して、編集者の見事な紹介(※下記のタイトル)があるのでそちらを参照して頂きたい.



今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.




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