• Takeaki Iida

6/6/2021 音楽家と作品への雑感(序章)


齢(よわい)80歳を優に超え、会社生活を終えて早や十数年の間、日頃の生活の中でクラシック音楽はテレビ放送、録画してあるビデオ再生と時々の生の演奏会が主であり、若い時代に買ったレコード、CDは滅多に聴きなおす機会が無くなった昨今の私です.


そこで聴きたいから買ってお蔵になっているレコード、CDを、もう1度だけでも聴くために思い付いたのが作曲家別に作品を聴きなおして、自分なりのコメントを残すことでした.


あくまでも自分用のコメントであって、音楽を職業としている演奏家、作曲家、評論家、ジャーナリスト、教師などの方々に読んでもらうものではありませんし、一方では、クラシック音楽にあまり興味のない方々にも読んでもらう必要はありません.


新型コロナという人類を震撼させるウイルスが蔓延し、世界がパンデミック状態に陥ってから早や1年半が過ぎ、日本では1年間延期となった「東京オリンピック2020」が、分けもわからずに1か月半後の7月から開催されそうなこの時期に、この草稿を始めることも又意味があることかと思いつつ、先ずは第1章に「シューマン」を取り上げます.


何故、第1章がシューマンなのか? 私の中ではシューマンはロマン派の作曲家というイメージの他にはバッハ、ベートーベン、モーツアルト、ブラームス、シューベルト、ショパン等に比べて、何か簡単にはコメント出来ない作曲家であるから、それ故に先ず取り上げてはっきりしたいという程度です.


直、今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品のリストをご参考まで下記、表にしました.


2021年6月

飯田武昭(82歳)

※リストのメディアNO.の表記(R=レコード、C=CD、V=ビデオ)



第1章 ロバート・シューマン Robert Schumann

(1810~56年、46歳没)


ロベルト(ドイツ語読み)・シューマンはドイツのザクセン地方ツヴィンガウ生まれで、父は教養の高い書籍商、母は歌が上手かったと伝えられる.早くからオルガンやピアノに親しむ一方、自宅の書籍を読み耽っていた.16歳で父が他界し母の希望でライプチッヒ大学からハイデルベルグ大学へと法律の道に進んだ.しかし音楽への志は断ちがたく26歳から再び音楽の道へ専念することになる.ピアノ講師ヴィークの愛娘のクララに熱愛したが、ヴィークはシューマンの生活の不安定を理由に猛反対した.練習をしすぎた結果、右手の薬指を痛めピアニストとしての道を断念.結果的には裁判沙汰の末クララとの結婚が許された.


ドレスデンからデュッセルドルフにも活動範囲を広げ、精神病との戦いも小康状態にあった時だが、突然部屋を飛び出してライン河に身を投ずるという事件の後、2年ほどでこの世を去った.若い頃はシューベルトのリートに感銘を受け、作曲家となってからはブラームス、ショパンなどの才能を一早く認めて著作にも取り上げる才があった.


シューマンと聞くと先ず思い出す曲はピアノ曲「子供の情景」(作品15)※⑥から「トロイメライ」、交響曲第3番変ホ長調「ライン」(作品97)※①.少し詳しい人は歌曲集「女の愛と生涯」(作品47)※⑦、「詩人の恋」(作品48)※⑧辺りかと思う.考えてみればやはり副題が付いているから思い出しやすいのだろう.


しかし、他の有名な作曲家に比べて著名な割には、素人なりに直ぐに思い出す曲が案外少ないのは何故かと思ってしまう.シューマンはロマン派作曲家として小品ピアノ曲が最も成功した分野であり、幻想的、抒情的な旋律が印象的だが、その人生と同じく常にどこか迷っていたのではないかと思わせる曲想が感じられる印象でもある.


改めて手持ちの分を聴きなおしてみると、上記の他にも交響曲第4番ニ短調(作品120)※②、ピアノ協奏曲イ短調(作品54)※③、バイオリンソナタ第1番イ短調(作品105)※④、同第2番ニ短調(作品121)※⑤等が特に素晴らしかった.


※①交響曲第3番変ホ長調「ライン」(作品97): ドレスデンからデュッセルドルフへ移った時の作品. 雄渾な楽想とロマンティックな香りに溢れた作品.


※②交響曲第4番ニ短調(作品120): 初演は不評で書きなおした経緯があるそうだが、幻想味を帯びた曲想によって聴きごたえある名曲.


※③ピアノ協奏曲イ短調(作品54):同時代のショパンやリストとも違った幻想的、詩的なシューマン音楽の特徴が良く出ている.


※④⑤バイオリンソナタ第1番イ短調(作品105)、同第2番ニ短調(作品121):素晴らしい.


※⑥「子供の情景」(作品15): 数週間の間に小品30曲を書き上げ、そのうちの13曲を選んで「子供の情景」とした.少年時代を思い出しながら作曲したと思われるが、子供の心を理解する大人のためのピアノ曲といえる.


※⑦歌曲集「女の愛と生涯」(作品47): クララへの強烈な愛が創作の原動力になっていて、娘時代の恋から結婚、出産、そして夫に先立たれる女の一生を主題とした8曲からなる.


※⑧歌曲集「詩人の恋」(作品48): 歌の年と言われる1840年に作曲され、詩は同時代のロマン派詩人ハイネの詩集「歌の本」からとられた. 歌曲ではあるが特にピアノの重要性が感じられる.


2021年6月3日記