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「」に対する検索結果が104件見つかりました

  • 3/13/2024 音楽家と作品への雑感 「グリーグ」

    第13章 エドヴァルド・ハーゲルップ・グリーグ (Edvard Hagerup Grieg) (1843年~1907年64歳没) 祖父がスコットランドからノルウエーに移住してきたが、ライプチッヒ音楽院で学び、その後にドイツ・ロマン派の影響を受けながらも、ノルウエーの民謡や民族舞曲の要素を取り入れた独自の音楽の確立で、生前から業績が認められていた. 北欧の音楽はあまり沢山は聴いて来なかったが、シベリウスよりもグリーグの方が私には親しみやすい優しさを感じる作曲家だと改めて気が付いた. ※ピアノ協奏曲 イ短調 ヴァン・クライバーンの演奏は、この曲の抒情的旋律を見事に表現している. ※ペールギュント組曲 第1番&第2番は戯曲に付けた曲らしく、ちょっと陽気な旋律が耳に直ぐに馴染む. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記の表にした.

  • 3/12/2024 音楽家と作品への雑感「シベリウス」

    第12章 ジャン・シベリウス (Jean Sibelius) (1865年~1957年91歳没) シベリウスはヘルシンキ大学で法律を学び、その後に音楽に転じ、ヘルシンキ音楽院で国民音楽の祖と言われる人物に出会いベルリン、ウイーンに留学. 題材をフィンランドの伝承叙事詩「カレワラ(Kalevala)」に求め、標題音楽と交響曲に優れた作品を残した. ※交響曲第2番 ニ長調:イタリア滞在中の印象を反映させた1902年完成の曲で、一般的に一番多く演奏されるようだが、第4楽章を除いては演奏ボリュームの増減幅が大きく、私にとっては聴きずらい曲だ. ※交響曲・第4番 イ短調:情熱と暗い幻想を宿した内面的な楽想には通俗味はないが、この曲を彼の最大傑作と認める人も少なくないというが、私にはやはり暗いイメージが払しょくできない. 交響詩「フィンランディア」が彼の最高傑作だと私には思える. ※ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47:交響曲作曲家シベリウス唯一の協奏曲.第1楽章はやや難解.第2&第3楽章は綺麗なメロディもあり聴きごたえある.アンネ・ソフィーネ・ムッターと諏訪内晶子の演奏を聴いたが両方とも素晴らしい演奏だ. ※セレナーデ 第1番&第2番及びユーモエスク 第1番:いずれも楽器ヴァイオリンの音色を最大限に聴かせる曲と感じたが、演奏家にとっては難曲ではないかと思われる. ※交響詩「フィンランディア」 作品26 帝政ロシアの圧政から逃れたいとのフィンランド国民的な強い想いを現した力強い曲想. ※交響詩「タピオラ」「トウオネラの白鳥」は灰色の景色の曲で、好みには合わない.「レンミンカイネンの帰郷」は行進曲風のリズム感が良い. 7つの交響詩を残したシベリウスは20世紀最大のシンフォニスト(交響曲作曲家)の一人と考えられている.シベリウスの交響詩は北欧伝説に出てくる「カレワラ(Kalevala)」やフィンランドの自然にまつわる神話に基ずいて作曲された. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記の表にした.

  • 3/11/2024 音楽家と作品への雑感「フォーレ」

    第11章 ガブリエル・フォーレ (Gabriel Urbain Fauré) (1846年~1924年79歳没) フォーレはフランスの南西部のパミエ(Pamiers)生まれ. 音楽学校でサン-サーンス (Camille Saint-Saëns) に学びその影響でをうけた.当時はワグナー、ベルリオーズが主流であったが、ドビュッシーに先立ってフランス音楽の復興、隆盛の基礎を築いた. ※レクイエム:3大レクイエムと言われるモーツアルト、ヴェルディ、そしてフォーレの中でも、私が一番好きなのはフォーレのそれであり、演奏はアンドレ・クリュイタンス指揮のパリ音楽院管弦楽団の録音は≪永遠の至福と喜びに満ちた解放感≫として死を表現した名曲・名演奏だと思う. 私は学生時代に混声合唱団に所属していて、フォーレとモーツアルトのレクイエムをステージで歌ったことがあり、それ以来、愛聴している名盤レコードだ. 3曲目のSanctus⇒ Pie Jesu(ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの歌声が最高!!) ⇒ Agnus Deiに繋がる ⇒ Libera me(ディートリッヒ・フィッシャーディスカウの素晴らしいソロ)⇒ in Paradismusで天国に昇華. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記の表にした.

  • 3/9/2024  サマセット・モーム著「月と6ペンス」The Moon and Sixpence by William Somerset Maugham

    本書は作家である主人公の「私」が語る、ゴーギャンの半生を書いたとされる歴史的大ベストセラー <あらすじ> 作家である主人公は、ストリックランド夫人の夕食会に招かれ、彼女の夫チャールズ・ストリックランドに会う.チャールズはロンドンで株の仲買人をしていたが、突然、家族を残して行方をくらませる.主人公は夫人に頼まれ、チャールズが住むパリへ向う.チャールズは貧しく孤独な生活を送っていた.絵を描くために家族を捨てたと話す. 5年後、主人公はパリで暮らす.三流画家のダーク・ストルーヴを訪れると、チャールズを知っており、その才能を誉める.チャールズに会うと「ストルーヴは何の特技もない奴」と冷たく言う.チャールズの暮らしは更に貧しくなり、クリスマス前にストルーヴと共にチャールズのアトリエを訪れると、彼は重病に臥していた.ストルーヴが彼の妻にチャールズを家で看病したいと話すと、ストルーヴの妻は強く反対した.だが、夫に説得されチャールズの看病をするうちに妻はチャールズに好意を寄せるようになる.終に夫を棄ててチャールズを看護するが、チャールズからは愛されず服毒自殺をする.妻の死を知ったストルーヴは失意のどん底にあるにもかかわらずチャールズを故郷のオランダに誘う.主人公はチャールズに会って、彼の家族や周囲に対する冷酷さと口の悪さを厳しく批判する. その後、主人公はタヒチを訪れる.そこでチャールズと仕事をしたというニコルズ船長に出会い、チャールズが船乗りをしていたと聞く.宿屋のティアレはチャールズにアタという妻を斡旋した.医師のクートラはチャールズがハンセン病に感染した晩年のことを語り、彼の遺作は遺言によって燃やされたことを知る. ロンドンに戻った主人公はストリックランド夫人に再会.タヒチでのことを話し終え、チャールズとアタとの間にできた息子が大海原で船を操っている姿を想像していた. <ブッククラブでの感想> この小説のチャールズはゴーギャンがモデルと言われていますが、時代背景やゴーギャンが最後に描いた絵にまで興味が持てました.「天才、凡人」、「悪魔、天使」、「拘束された人生、自由な人生」、「男の人生、女の人生」等の人生の違いから「良い、悪い」ではなく、キリスト教の教えの神の存在、運命は神が与えたものであることを語っているようなストーリーであると思います.また私は神に選ばれない凡人でよかったとも思いました. ゴーギャンの絵を鑑賞したことも、鑑賞し得る絵心もないまま、チャールズの徹底した冷酷さ・残忍さ・狂気を「天才画家」故と案外すんなり受け入れ、彼の壮絶な生涯の物語を一気に読み切りました.モームの作品は初めてでしたが、登場人物や情景描写の解像度が鮮明で、人間の心理や世相の核心をつく言葉もちりばめられており「月と6ペンス」というタイトルのきっかけを生んだというモームのもう一つの代表作「人間の絆」も読んでみたいと思います. チャールズのタヒチでの暮らしの描写の中で「チャールズの住まいには音がなかった」、「大気は夜に咲く白い花の香りがする」等の表現が特に印象的でした.無謀に見えるチャールズの人生ですが、彼は自然美や美術という宗教に取り憑かれ、邁進した人生だったのではと思いました. 本書の最後に引用されている "The mills of God grind slowly, but they grind exceeding small" の意味を調べてみると「神のみわざを讃える」というより、神のDivine retribution (天罰のようなもの)のようです (https://wikipedia.org/wiki/Mills of God ) チャールズが癩病で亡くなったことを神の罰だとロンドンの息子ロバートが言ったことに対して、主人公の作家は後妻アタの息子が実に自由に生き生きと成長していたのを思い出し、違和感をもったのかもしれません.日本語訳を読んでもう一度考えてみます.それにしても本の余韻を残す凄い幕切れだと思います. モームの作品を読んだのは初めてでしたが、モームについて調べると吃音や親との別れなど、幼少時から万丈な人生だった様ですね.それが作品の構成や深さに繋がっているのではないかと思います.平坦な人生を送った作家にはチャールズの様な複雑で冷酷な登場人物は書けないかもしれません.そして、シンガポールのラッフルズ・ホテルは主人公の常駐場所だったようで、サムセット駅はそこから来ているとのこと.シンガポールに行った時には、立ち寄りたい場所です. 「月と6ペンス(サマセット・モーム著)」The Moon and Sixpence by William Somerset Maugham

  • 12/16/2023 APA コンサート、武蔵野市公会堂

    Brahms op114 を 古泉元子さん(ピアノ)と 齋藤肇さん(チェロ)と弾く.来年4月13日第6回国際音楽祭に於いて同じ曲を小金井宮地楽器ホールで米国で一緒にピアノ・トリオを弾いているチェリストのDr. Steffen Luitzと弾く.ピアノは前回 Mendelssohnでご一緒したプロ級のピアニスト鳥井一行さんにお願いした.今から楽しみ.

  • Copy of 8/15/2023 フィルム・レビュー「バーベンハイマー」

    2023年は『バーベンハイマーの夏』という人もいるかもしれない.まだご存じでない方のために、このブロッグに下記2本の映画が世界的なセンセーションを引き起こした現象に対する私の見解を投稿した. 7月に『バービー』と『オッペンハイマー』いう2本の高額予算を獲得して制作された映画が同時に劇場公開された.どちらも大ヒットしており、どちらもとても良い映画だと思う.まったく異なる2本の映画を観ようと米国全土でファンが劇場に詰めかけている.どちらもハリウッドが提供できる最高のタレントを駆使し、どちらも観客を感動させているが、その理由は全く異なる. バービー PG-13指定 出演: マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、ケイト・マッキノン、シム・リウ ジャンル: コメディ、ファンタジー、アドベンチャー 監督: グレタ・ガーウィグ 脚本:グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック グレタ・ガーウィグが実生活のパートナー、ノア・バームバックと共にこの映画の脚本を書いたときは、恐らく二人とも、アイコン人形を描いたこの映画がここまでの成功をもたらすとは想像できなかったと思う. 有名で賞賛されている作家だったため、彼らはこの映画に約1億4,500万ドルという高額の予算を獲得することができた. また信じられないことに、劇場公開からわずか 1 か月後、この映画はすでに 10 億 7,700 万ドルの興行収入を記録した. なぜ? そして、どうやって? 優れたキャストと十分な予算を備えたこの映画は、公開前に多くの誇大宣伝を引き起こした.確かにこれは初期の成功の一部によるものだと思が、それ以上の何かがこの映画にはあると思う.現在、我々は非常に深刻な世界に生きている.よって、今、人々はただ笑いが必要なのかもしれない.また、子供の頃を思いだすノスタルジックな、愛されている人形のようなものは確かに人の心をつかむ方法なのではないか.少なくとも映画の最初は、バービーはまさにそのノスタルジックな対象である.映画が進むにつれて、女性(そして男性)が過去と今日に直面してきた問題も思い出させせる.この映画は風刺と人間性の完璧なバランスが取れていると思う.バービーがバービーの世界から私たちが今住んでいるまさに現実の世界へ旅立つにつれて、たくさんの笑いがあり、また考えさせられる点もたくさん提供する映画だと思う. 予告編: https://www.youtube.com/watch?v=pBk4NYhWNMM オッペンハイマー 「プロメテウスは神々から火を盗み、人間に与えた.そのために彼は岩に鎖でつながれ、永遠の拷問を受けた.」 R指定 出演: キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー ジャンル: ドラマ, 伝記, 歴史 監督: クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーラン、カイ・バード、マーティン・シャーウィン この映画はこの不気味なギリシャ神話からの引用で始まり、映画中オッペンハイマーの劇的な生涯を暗示している. この映画は、クリストファー・ノーランと映画の脚本を共同執筆したカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンが書いた本『アメリカン・プロメテウス:J・ロバート・オッペンハイマーの勝利と悲劇』を基にしている. この映画は、オッペンハイマーが成人してからの人生に焦点を当てており、その中にはニューメキシコ州ロスアラモス近くに建設された秘密兵器研究所の所長を務めたマンハッタン計画での役割も含まれている.そこで、何万人もの人々を即死させ、太平洋戦争を終結させた兵器の核反応をどのように利用するかを、オッペンハイマーを中心に他の多くの世界中から集められた時代の最も輝かしい科学者達が頭を悩ましていた. この映画を観て驚いたのは、自分が「原爆の父」のことをこんなにも深く考えてしまったことだ. 正直に言うと、この映画を見るまで、私はオッペンハイマーという人物についてほとんど知らなかった. 私は彼が核兵器創造に貢献した恐怖だけを知っていた.この映画で非常に巧みに描写された彼の人生に対する個人的および外部からのプレッシャーを見て、今では私は彼について全く異なる理解を持っている. 『オッペンハイマー』は 3 時間という長い映画なので、そこで取り上げられたさまざまなトピックについて詳しく説明するのは困難であるが、私にとっては完璧な映画であった. オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーは特別な評価に値すると思う. 彼はタイトルロールで素晴らしく、オッペンハイマーに似ているだけでなく、その役を演じるのに必要な強さと人間性も備えている. 素晴らしいキャスト、リアルなセットや衣装、効果的なサウンドなど、映画全体がこれ以上ないほど素晴らしい出来であると思う.クリストファー・ノーランがほとんどの映画監督と異なる点の 1 つは、彼が特殊効果に依存していないことで、彼はカメラを通して彼の望むものを手に入れる. 彼の熟練した技術は各フレームに明らかであった. バービーとオッペンハイマーの目覚ましい成功と、その主題がどれほど異なっているかを考えるとき、私は彼らを同一としているものの重要性に衝撃を受ける.我々は私たちの過去を思い出す必要があるということだ. 人生のすべてのことと同様、良いことも悪いことも覚えておくことが私たち人間を人間たらしめるのだと思う. 予告編: https://www.youtube.com/watch?v=uYPbbksJxIg

  • 4/2/2023 日本の春(彦根城の桜)

    日本に居られるのに、掲題のメールを送るのも変ですが、前信の「京都・円山公園の枝垂れ桜」と対になっている気がするのでお送りしておきます. 桜の季節の彦根城を観ようと思っていたことを漸く実行に移すことが出来ました.昨日の日曜日は好天にも恵まれ、片道2時間の列車に揺られて出掛けてきました. 彦根城は外観の美しさと城本来の機能である軍事面にも優れていることで、姫路・松本・犬山・松江と並んで国宝に指定されています.桜とも似合う美しい風景があちこちに観られました.

  • 3/30/2023 京都・円山公園の≪枝垂れ桜≫

    京都・円山公園の≪枝垂れ桜≫を観てきました. 現在の大木は二代目で、初代は昭和22年(1947)に樹齢220年で枯死してしまいましたが、その初代の種子から大事に育てられた桜が、樹齢約80年を数える大木に成長しています. 満開の時に好天の下で観たいと思っていましたが、コロナ禍で叶わず、本日やっと念願かなって満喫してきました.

  • 3/28/2023 音楽家と作品への雑感 「ラフマニノフ」

    第10章 セルゲイ・ラフマニノフ Sergey Vasilyevich Rachmaninoff (1873年~1943年69歳没) 近代ロシアの偉大なピアニストで作曲家であり、オペラ指揮者としても帝政ロシア末期の第1人者であった.裕福な地主の家に生まれたが、浪費家の父親のために家は没落し、母方の家族と共にサンクト・ペテルブルグに暮らす.9歳(1882年)でペテルブルグ音楽院に入学、15歳(1888年)でモスクワ音楽院でピアノ及び作曲を学んだ.30歳代からドレスデン(ドイツ)で活躍する一方、時々、モスクワへ帰っていたが、1917年のソビエト革命で、スイスのルツェルン郊外に(今も孫が住む)別荘を買い、そこで静かに作曲できる時期があり、名曲「パガニーニの主題による狂詩曲」他を作曲.その後、アメリカに渡り(1942年)ビバリー・ヒルス(ハリウッド)を第2の故郷と定め、晩年はスターリンの再三の帰国呼びかけにも拘わらず、第2次世界大戦の勃発もあり、祖国の地を踏むことは無かった. モスクワ音楽院在学中から尊敬していたチャイコフスキーの影響を受け、ドイツのロマン派とロシア国民楽派の作風を折衷したような作品を多く作曲.傑作と言われる作品の大部分は亡命前の若い時期に書かれた物が多く、哀愁や祖国愛が表れた曲想が多く、生きた時代には珍しい大衆性のある保守的な作風で主にピアノの名曲を多数残した. ラフマニノフはピアノ演奏家としても名手であったが、両手を合わせるとピアノの白鍵22個分の大きな手であったことも伝えられている. 曲目の紹介 ※1 ピアノ協奏曲第1番 アシュケナージ(ピアノ、Pf)のピアノ協奏曲第1番(C-26)はテンポが速く緩急の切り替えしも多い、演奏家にとっては難曲だと思う. ※2 ピアノ協奏曲第2番 A. 同じくアシュケナージのピアノでコンドラシン指揮モスクワ・フィルハーモニーの演奏によるピアノ協奏曲第2番(R213)は前半は暗く重い空気間で重厚に,、後半は華麗に響くピアノの鍵盤音が大変印象深い. B. 辻井伸行のピアノ、佐渡裕指揮のベルリン交響楽団演奏(C-56)は適度なテンポと軽快な演奏で気張らずに、この名曲を楽しく聴くことが出来る. C. 他にも聴き直した数人のピアニストによる演奏はどれも良かったが、特にヴァルトビューネ野外コンサート (ベルリン) のキリル・ゲルシュタイン(Pf)とキリル・ペトレンコ指揮のベルリンフィルの演奏(CL2-Q)は、森に囲まれた野外の夏の夕暮れに相応しい演奏で大変に気に入った. D. もう一つ、河村尚子(Pf)のファビオ・ルイージ指揮のNHK交響楽団の演奏(CL23-X)も首席指揮者就任したばかりのルイージのプログラムだけに今後への期待も大いに持てた. ※3 ピアノ協奏曲第3番 A. ホロヴィッツ(Pf)のピアノ協奏曲第3番(C-27)は第1楽章で主旋律が気持ち良く表現されるところから、次第に葛藤のような強烈な旋律が現れ耽美に浸るだけの余裕がない. B. 仙台フィルとの共演の若干20歳の藤田真央(CL20-Q)は、この曲の11回目の演奏とのことだが、そのテクニックと共に圧倒される表現力である. C. デニス・マツーエフ(Pf)とリッカルド・シャイーイ指揮のルツェルン祝祭管弦楽団の演奏(CL4-J)も印象に残る名演. ※4 「パガニーニの主題による狂詩曲」 A. ヴァン・クライバーン演奏(R214)は、その豪快で華麗な演奏の中でも有名な第18変奏が例えようもなく美しく物悲しい情感を表現している. B. アシュケナージのピアノによる同じ曲(C-26)は更に難易度をあげたようなテンポの速い緩急自在な演奏で、鍵盤上で転がるような音符の散りばめが見事と思う.それにしても3分強の第18変奏曲の美しいメロディーがいきなり現れてくることで、この曲は人口に膾炙(かいしゃ)される名曲になったと思うのは、偽わざる難曲への感想である. ※5、ピアノソナタ第2番 ホロヴィッツ演奏(C27)で聴く限り、不安の中に安らぎがあると聴こえると激しく怒り狂うような鍵盤を叩きつけるフレーズが来るなど、ソナタの常識からは外れた曲想が支配し続ける. ラフマニノフは ※ヴィルトゥオーソ(伊 virtuoso)と呼ばれる. ※ヴィルトゥオーソ(伊 virtuoso)とは、本来は道徳的な意味を持ち、有徳な人というほどの意味であったが、19世紀の半ば頃からは、優れた技巧を持つ音楽家、特に演奏家を指すようになり、巨匠とか名人とかいう意味.パガニーニやリスト、指揮者ではフルトヴェングラー、バイオリニストではフーベルマン、ピアニストではコルトーやケンプなどが最後のヴィルトゥオーソと言われる. ※6 前奏曲集 作品23 及び 32 スヴァトラフ・リヒテルのピアノ演奏(R412)で聴いたが、協奏曲とは異なり大変聞き易い馴染みの良いメロディーが続く、何度でも聴いてみたい曲と感じた. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストを参考までに下記の表にした. VILLA SENAR: A MAGICAL PLACE SUPPORTED BY RACHMANINOFF FOUNDATION

  • 3/6/2023 本のレビュー、ベアテ・シロタ・ゴードン著、「1945年のクリスマス」日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝

    <あらすじ> ベアテ・ゴードン(旧姓シロタ)さんは、現在の日本国憲法の草案を書いた一人.当時、彼女は大学を卒業したばかりの22歳.オーストリア生まれのベアテさんは、音楽家の(ピアニストのレオ・シロタ)父親が日本で教えることになり、幼少時に戦前の日本へ移住.家には海外の有名な音楽家が集い、豊かな暮らしをするも、戦争が始まる直前に単身でアメリカへ留学.戦中はカリフォルニアのMills Collegeで過ごす.終戦4ヶ月後の1945年のクリスマス・イブに日本に戻り、長野へ疎開していた両親と再会する. ベアテさんが見た当時の東京は、皇居以外は焼け野原.日英両語ができる人が少ないため、GHQに知り合いがいた彼女は日本国憲法を新しく作るにあたって(GHQでの肩書は民生局員なのだが)約2ヶ月で日本が民主主義となる日本国憲法の草案を書く、という大役を任命される.高校卒業まで過ごした日本は、男女平等とは程遠く、女性は不平等を我慢するのが当然、という慣習や法律を変えることに注力する.日夜、法律専門のベテラン男性たちと肩を並べて仕事に励む. 僭越ながら、写真は私の父の本への書き込み.ノートは2冊にもなった. ここまではスムーズだが、ベテラン男性達は彼女の草案を読んで、ほとんどそれを削除してしまう.1945年のアメリカにも「完璧で本質的な平等」はなく、彼女の案はプログレッシブ(進歩的)過ぎた.ベアテは悔し涙にくれるが、疎開中は栄養不足だった両親にGHQで働いたお金や物を支給できるのは好都合だった.そして、いよいよ1946年に新しい憲法が発布される. <ブック・クラブでの感想> 新年会をしながら、話合いは2時間半にもおよび盛り上がったブック・クラブ.感想の抜粋は以下. 「意外と法案づくりのページは少なかったけれど、彼女の日本女性への想いは、その後のジャパン・ソサエティ等での活動に映し出されていますね.自分の法案を周囲の男性たちに説得できなかった後悔が何年も続いた部分など、人間として錯誤しながらも前向きに生きた彼女は立派です.批判もある様ですが、憲法づくりに女性を採用していなければ、どうなっていたかと怖くも思います.」 「敗戦直後に志の高い若い女性が男性の中に入って日本のために憲法を書いたなんてこと自体、全く知りませんでした.原題はそういうことなんだなと.」 「あまりにも興味深く2日間で読み終えてしまいました.ベアテさんはなんと「豊かな」人生を送られたのだろうと思いました(金銭的な意味ではなく).また、ロシア系ユダヤ人が、時代に翻弄された中で大きな犠牲を払いながらも強く生き抜いた人もいたのだなあと思いました. 日本国憲法に「男女平等」を書く、のところでGHQ案が最終的にはどのように日本国憲法となったのだろうと思い、他の理由で手に入れた添付資料と見比べながら読みました.「憲法カフェ」という憲法9条を守る会のセミナーに行ったときに教えていただいた資料です. 私はまだ勉強不足で改憲派でも護憲派でもありませんが、正直この自民党案を見たときなんでこんなに全部変えてしまうんだろうと思いました.アメリカ(および他先進国)の憲法は「徐々に」改訂をして変わって行きました. 恥ずかしながら今の日本国憲法が生まれた背景がこのようなことだったとは知りませんでした.この本は改憲派にも護憲派にも読んでほしい本だと思います.昔、憲法学者から聞いた言葉で「憲法は理想の理念なんで」という言葉がありますが、もしそれが目的だとしたら私達はこれからどのような理念を築いていくのだろう、と深く考えてしまいました.」 「国立女性教育会館で昨年シロタ・ベアテさんの展示会があったそうです.これを見ると、当時の感覚が少しでも伝わるのではないでしょうか.」 https://www.nwec.jp/event/archiv ecenter/Beate_online.html

  • 1/23/2023 布施明ライブ・ツアー「よみがえれ昔日の情熱」

    1月23日、調布市で開催された布施明ライブ・ツアーへ行く機会があった. ワイフが見つけてすぐ予約したのだが、テーマが「よみがえれ昔日の情熱」というものだったので、我々がよく耳にしていた曲が多いのかと期待していたが、もっと広いレパートリーで、小生が知っていたのは「シクラメンのかほり」と「霧の摩周湖」自身でそれと「マイウエイ」(日本語歌詞)くらいだった.エンデング・ナンバーはイタリア語で「Time to say goodbye」.たっぷりと、またある種の安心感をもって2時間を過ごすことが出来た. 自分としては持ち歌に限らずもう少し広い選曲(ジャズナンバーなども)を期待していたのだが、それは別として、圧倒的な声量はまさに驚きの一語.あと2年でデビュー後60年、後期高齢者になったというのはまさに驚きだった.最近、自分たちの世代の歌手が引退することが多く、そのお別れ的なショウやコンサートに出合うことがあるが、同年代であっても声量が落ちたなあ、と感じさせられたことも少なくないので、特に感じたのかもしれないが. 小生、うかつなことに彼が三鷹市出身、地元府中の中学校へ通ったという事を知らなかったが、ユーモアたっぷりなトークもなかなかで、学生時代までの地元の話も好感を持って楽しむことができた.しかし話が進むにつれて、彼自身が昨今の日本のありように不安を持ち、また我々の時代、つまり昔日の良き社会の復活を望んでいることが胸に響いた.英国人女性との結婚もあり、ニューヨーク(あるいはハリウッド)生活も長かった経験もあることだろうが、そういう思いがこのツアーのタイトルになっていたのだ、ということを改めて知った.まだまだ、引退には早い.好漢、幸あれと思う豊かな気持ちで帰途についた.

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