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- 9/13/2021 音楽家と作品への雑感「チャイコフスキー」
第2章 ピヨートル・チャイコフスキー Peter Tschaikowsky (1840年~1893年、53歳没) チャイコフスキーは幼いころから音楽には興味が強かったが、両親は音楽が趣味の一つ程度の環境で、本人は法律学校を卒業し官吏となるが、20歳頃にはペテルスブルグのロシア音楽院の第1回卒業生として音楽家としての教鞭も取るようになる.初期にはパラキレフを始め国民楽派の<5人組>と交流し、音楽院時代には師であるアントン・ルビンシテインの影響を受け、作風は西ヨーロッパの伝統に根ざしたもの.37歳で教え子と結婚するも直ぐに離婚.その後、スイス、イタリア、フランスで生活することが多く、富豪の未亡人メック夫人の年金援助を受けながら作曲活動に専念した.45歳からはモスクワに戻り、最も充実した活動期に入る.しかし、高まる名声に反し、健康は過労のため悪化し、メック夫人の援助打ち切りにも合いペテルスブルグでチフスのため53歳で死去. 私は先の戦争(76年前に終戦を迎えた太平洋戦争、第2次世界大戦)の昭和20年(1945年)8月15日の終戦の年の3月に東京大空襲を自宅の東京都渋谷区で経験し、その年の6月に縁故疎開で長野県南安曇郡(現在の安曇野市)へ移った.6年後の昭和27年(1952年) に以前住んでいた渋谷の家が焼失していたので家族は東京都大田区に戻った. 終戦後間もない当時、東京都大田区の自宅で父親は忙しい日々の中でも、自宅の庭のバラ園の手入れと、何故か数枚のレコードを毎日のように聴いていた記憶がある. 1枚はクラシック音楽のチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」であり、もう1枚はアメリカン・ポップスのダイナ・シュアが歌う「ブルー・キャナリー」だった.何故この2曲を繰り返し聞いていたのか、ついぞ父親に尋ねることもなく過ごしてしまったが、私がチャイコフスキーを先ず知ったのは、この脳裏に焼き付いた「悲愴」の憂愁で甘美な旋律からと言える. 因みに、私の母親は文学書を読むのが好きで、特に「万葉集」には造詣も深く、万葉集の仲間と毎月のように小旅行をするのが楽しみであったことを思い出す.又、母は昭和18年(1943年)に原因不明の爆発事故を起こして柱島沖で沈没した戦艦「陸奥」の主計官として乗船していて殉死した、次弟の慰霊の旅に毎年参加していたことも強く思い出に残っている. チャイコフスキー作品の特徴は甘美な旋律と憂愁の味わいに満ちたもので、直ぐにでも口ずさめるメロディーが多いと思う. チャイコフスキーの作品の中ではやはり、耳に残る旋律の交響曲の第6番「悲愴」、ピアノ協奏曲第1番、バイオリン協奏曲を先ず聴きなおすことにした.その後に3大バレエ曲を聴きなおし、クラシック・バレエの神髄はこれにありと改めて思った.「白鳥の湖」「くるみ割り人形」は素晴らしく、バレエ組曲「眠りの森の美女」(作品66)は第5曲の“ワルツ”が曲の題名を表現するように軽快で楽しめる.又、「アンダンテ・カンタービレ」(弦楽四重奏曲第1番ニ長調第2楽章)もチャイコの甘美な旋律が心に沁みる. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品のリストをご参考まで下記、表にした. ※①交響曲第5番ホ短調(作品64):改めて聴くと第6番「悲愴」と比べても勝るとも劣らない甘美な旋律と憂愁な味わいに満ちた名曲だと思う. ※②交響曲第6番ロ短調「悲愴」(作品74):絶望的な悲嘆感が全曲に漂い、その効果は比類なきものと改めて思う. ※③ピアノ協奏曲第1番変ロ短調(作品23):1874年(34歳)に、僅か1か月で書き上げた、汲めども尽きぬ楽曲が豊かで流麗なこのピアノ協奏曲は豪壮華麗な冒頭が印象に残る屈指の名曲.中村紘子のNHK管弦楽団との演奏(1997年)は心に残る. ※④バイオリン協奏曲ニ長調(作品35):奇しくも、ブラームスのバイオリン協奏曲と同年の1878年(38歳)の作曲.演奏者泣かせの難曲と初演に際しては不評だったが今や名曲.諏訪内晶子のチャイコフスキー国際コンクール最年少優勝(1990年)のモスクワ大ホールでの演奏は楽員が全員退場後も聴衆の拍手鳴り止まなかった.庄司沙矢香と指揮ユーリ・テルミカノフ/サンクトペテルグルグ交響楽団とのNHK音楽祭(2008)の互いの信頼関係が満ち満ちた演奏には感動する. ※⑤バレエ組曲「白鳥の湖」(作品20):バレエを愛好する人が先ず引き込まれてバレエ・ファンになったきっかけは、この作品からだろと思わせる流麗なテンポの良い旋律が心地よい.アンセルメ指揮によるスイス・ロマンド管弦楽団の演奏は淡くデリケートで心地よい. ※⑥バレエ組曲「くるみ割り人形」(作品71):所謂、3大バレエの最後の作品.物語をホフマンの童話からクリスマスに起こったオモチャとお菓子の国での出来事というメルヘンそのものを題材に、実に豊かな創造力と想像力を示して、楽しく美しい音楽に仕立て上げた名作だと思う. ※⑦弦楽セレナード ハ長調(作品48):バッハやブラームス等のドイツ音楽の影響を滲ませながら、独特のスラブ的哀愁を随所に滲み出て美しい.特に、第1楽章では小高い丘陵に咲く草花と小さな池の深みに泳ぐ小魚を彷彿させるような旋律と、第2楽章はN響アワーのオープニング(1995年)他で流された甘美なメロディーで、いつまでも聴いていたい名曲中の名曲と言っても過言ではない.コリン・デービス指揮によるバイエルン放送管弦楽団の演奏は秀逸. 2021年9月10日記
- 9/8/2021 本のレビュー、フランソワ・モーリヤック(François Mauriac)著テレーズ・デスケルゥ (Thérèse Desqueyroux)
<あらすじ> 第1章は裁判所を出るテレーズとその父親で始まる.弁護士から彼女の罪は不起訴になったことを冷たく知らされ、父親と言葉少なに馬車に乗り込むテレーズ. 第2章からは少女時代の回想と現実が交差する.テレーズの少女時代の友人アンヌは妹のような存在.結果、アンヌの兄、ベルナールと結婚することになる.ベルナールとアンヌの両親は大地主だが教育はない.テレーズは地元の議員の娘であり、両家はこの結婚には賛成だが、家族同士の競争心の様なものも見える.やがて、テレーズは夫の家族には土地と財産が名誉であり、跡継ぎの男子を生まないといけないというプレッシャーや育ちの違いにも気づくことになる. やがてテレーズは出産するが、子供に関心を持つことができず、すべてに無気力になってしまう.ベルナールの家族や執事達は冷たく、テレーズは寝室に留まりタバコをふかす毎日.しばらくして、テレーズは夫に対して罪を犯すが、故意なのか放心の中で犯したのか分からない精神状態.その裁判の結果が第1章のシーンである.裁判の後、最後の幕は夫とパリへ行き、カフェでお互い同意のうえで別れ、夫は去っていく. <ブッククラブでの感想> 「素晴らしかった!さすが、ノーベル賞受賞者の作品だけあって、とても一言では感想を言えないですが、閉ざされた世界からの脱出は永遠のテーマですね.自分を偽らずに、生まれてから死ぬまで一つの家族や地域の中で生きていくのは難しいと思う今日この頃.人生の選択は一生ものではなく、プロジェクトだったらいいのに、と思ってしまう.社会が個人にある型に留まるように圧力をかけると、そこに留まるために自分自身および他人に言い訳を考えて落ちていくスパイラルにはまってしまう、誰でもテレーズになり得ると思います.テレーズは、自分では殺人未遂前後でもドラスティックな変化がないと思っているのに対して、ベルナール、父親やアンヌの変わりようも見事に描かれていると思いました.人間みなそうなんでしょうね、自分は一貫していると思っている、その悲しさが心に残りました.」 「色々な意味で読み応えのある本でした.まず翻訳者によって本ってこんなにも違うものかということ.遠藤周作さんの訳はとてもこなれていて読みやすかったです.彼の作者への愛情を感じます.映画も見たのですが、本に忠実でした.馬車と車の違いはありましたけど、風景や人物像の描き方も本を読んで想像していたものをさらに豊かにしてくれるようでよかったと思います.ただ最後の13章、パリでベルナールとの最後の場面、これは原作の持つ深い意味、感情を全て映像で表すのは難しいように思いました.自分の想像力の問題もありますが.何れにしても最終章は本の方が素晴らしいのは確かです.」 「夫に対して罪を犯し、子供は他人任せの妻.当時、この出版はカソリックの影響が強かったフランスの田舎では問題になったと思う.裕福で満ち足りている時に感じる、家庭の閉塞感は贅沢病と解釈されることもあり、近代の現象とオーバーラップしてテレーズの感情が分かる気もするが、現代の女性の方が短絡的であり、楽観的に早期に「別れ」を切り出すのではないかと思う.夫に対する憎悪を抱いてまで暮らしていく女性とその時代の宗教観は、文章では理解できても「なぜ?」と思った行動、生き様であったでした.モーリアックが当書で書こうとした一部は、それぞれの人物が持つ目に見えないエゴであり、それが悲劇につながったのではないかと思う.」 「主人公たちの心模様の変化が本当に面白かった.現代だと、Netflixで産後の鬱になった裕福な主婦のスリラーとして映画が作られそうな感じ.」 François Mauriac (1885年10月11日 - 1970年9月1日) https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.185018/page/n7/mode/2up
- 9/10/2021 フィルム・レビュー「命の価値(Worth)」
PG-13 出演:マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、エイミー・ライアン、ローラ・ベナンティ 脚本:マックス・ボレンスタイン 監督:サラ・コランジェロ 人間の命の価値はどう決められるのか? 9/11以降に起こったことの実話に基づき、遺族に犠牲者の死を補償する査定の過程において、この映画は問いかける「CEOの命と清掃員の命の価値は同じであろうか?」「失われた命の価値はどのように査定できるのか?」 マイケル・キートンは、9月11日ニュー・ヨークで起こった惨事に関わる犠牲者補償基金を率いる有名な調停人ケネス・ファインバーグを演じている.ファインバーグはこの悲劇に大変に心を痛め、彼は彼の法律事務所が、世界貿易センター (World Trade Center) と国防総省 (Pentagon) で亡くなった人々の家族への補償に無料で携わる決心をした.ファインバーグは「数字」男であり、事件を解決するために、過去、多くの紛争を両当事者が相互に納得できる解決案を導いた. しかし、9/11の状況は、ファインバーグがこれまで取り組んできた事件とはほど遠いものであった.数年に渡り、彼は自分の過去の「公式」が今回はうまくいかないことに気付き、家族のために正義を得ようとする過程を描く. 私は9/11の恐怖に関わるのこの部分のエピソードを知らなかった.この映画は最近の歴史の中で最も悲劇的な事件のひとつを扱ったもので、私たちに刺激的で感動的なエピソードを提供する. https://www.youtube.com/watch?v=OOAemeB9CAw
- 8/2/2021 盛夏のリサイタル
今日から盛夏の8月です. 東京オリンピック競技もたけなわ、日本は金メダルラッシュで、どの競技を観ても興奮する祭典も残り1週間となりました.新型コロナ禍拡大が大変心配な状況でもあります. 本日、私はサックスのピアノ伴奏を日頃付けて頂いているピアノ教室の講師の先生のピアノ教室発表会(@宝塚文化創造館 - 旧宝塚音楽学校校舎)に昨年末のクリスマス・コンサート以来の出演者25人の内、一人だけサックス演奏で出演しました. 本番直前のリハーサルにおいて、ディズニー映画「白雪姫」から「ハイホー」 https://www.youtube.com/watch?v=r0jUiHXH39k 本番にて、映画「旅情」からSummertime in Venice https://www.youtube.com/watch?v=xF7v69je3sc 超、気持ちいいー!(北島康介選手の真似で~す!)
- 9/5/2021 フィルム・レビュー「失われたレオナルド The Lost Leonardo」
PG-13 作家:アンドレアス・ダルスガード、クリスチャン・カーク・マフ、アンドレアス・コエフォード、マーク・モンロー、デュスカ・ザゴラック 監督:アンドレアス・コエフォッド 時間:1時間36分 「麻薬、売春、芸術は世界で最も不透明なビジネスだ」これは、この魅力的なドキュメンタリーのためにインタビューされた人の一人からの引用である. 「失われたレオナルド The Lost Leonardo」は、救世主ムンディ(世界の救世主)の絵を誰が描いたかという謎を解き明かそうとする. この絵画は2017年11月15日にニューヨークのクリスティーズで4億5000万ドルで競売されたこれまでで最も高価な絵画として知られている.なぜそんなに莫大な金額が払われたのであろうか.多くの人がそれはレオナルド・ダ・ヴィンチの失われた傑作であると信じているからだ.ダ・ヴィンチの既知の絵画は世界で20点しかないため、この作品は非常に価値のあるものになる.しかし、この絵は本当にレオナルドによるものであろうか?これが映画の前提であり、私は確固たる結論を出せずに映画を観終わった. 現代のテストでは、サルヴァトール・ムンディは1499-1510年に描かれたものであり、クルミのパネルに油が塗られていることが証明されている.ダ・ヴィンチが描いた年代と彼が作品に選んだ媒体等全てが一致している.しかし、この映画が明らかにしているこの絵の創造については多くの謎がある. このドキュメンタリー映画は、アート・バイヤーのアレクサンダー・パリッシュが数年前にニューオーリンズのディーラーから2,000ドル以下で購入した絵画について話し合うところから始まる.その絵はとても古く、とても傷んでいたが、彼はなぜかそれが本物であると確信していた.彼の金融パートナーと相談した後、彼らは絵を復元する価値があると信じ、ニューヨーク市の有名な美術史家であり復元者であるダイアン・モデスティーニ(写真下)にそれを持って行った. モデスティーニはこの古い絵の表面をきれいに洗浄し始めた.そして、彼女がきれいにすればするほど、モデスティーニはこの絵がレオナルド・ダ・ヴィンチによるものであると確信した.彼女のこのプロセスの話は面白かったし、彼女はこの古い絵画を元に戻すという見事な仕事をした.しかし、それはあまりにもよすぎる話ではないか?この絵は本当にダ・ヴィンチによるものであるのか、それともモデスティーニのものなのか?これは、このドキュメンタリーで尋ねられる多くの質問の1つにすぎない.救世主がニューオーリンズからクリスティーズのオークション・ハウス、そして現在の所有者に至るまでの道のりは、ジェームズ・ボンドの映画のようで、アートのビジネスについて再度考えさせられた. ドキュメンタリー・プレビュークリップ: https://www.youtube.com/watch?v=j0lXLGgQjYY The Lost Leonardoのディレクター、Andreas Koefoed(アンドレアス・コエフォッド)とのインタビュー https://cineuropa.org/en/interview/406183/
- 6/15/2021 Film Review「風に傾く:アンディ・ゴールズワージー」
ドキュメンタリー PG 監督:トーマス・リーデルスハイマー 出演:アンディ・ゴールズワージー、ホリー・ゴールズワージー 放映時間:1時間37分 2017年に制作されたこのドキュメンタリーは、著名なアーティストに関するドキュメンタリーであると同時に、人生と芸術についての瞑想でもある.このドキュメンタリー はほとんど対話がなく、その代わりに、ゴールズワージーが自然界を探索してインスピレーションを得てから、自然の中で思うままに遊びならが、一時的な作品を生み出す.石や木で作られた作品は人類の繁栄のために作られる. ゴールズワージーは、英国の彫刻家、写真家、自然芸術家.このドキュメンタリーを見る前はゴールズワージーに関して何も知らなかったけれど、サン・フランシスコのデ・ヤング美術館で彼の作品を見たことがあることに、このドキュメンタリーを観てすぐに気がついた.彼の作品を美術館で観たときは誰が作ったのか全く想像もできなかった.博物館に入る前に、歩道に沿って曲がりくねった細かい地震でできたような亀裂がある.それを見て、市の歴史を思い出す賢い方法だと思ったのを覚えている.今、私はこのドキュメンタリーを見て、それがゴールズワージーによって作られたものだということを確信した. ここに彼の美しい作品のいくつかの例があります. アンディ・ゴールズワージーとは? https://www.youtube.com/watch?v=fIQKZghtyiY 自然芸術家、アンディ・ゴールズワージー の芸術のプロセス https://www.youtube.com/watch?v=sngXz55b4bc
- 8/2/2021 フィルム・レビュー「マッカートニー3-2-1」
Huluのドキュメンタリー/伝記6部構成のミニ・シリーズ 制作:ジェフ・ポラック https://www.youtube.com/watch?v=KAkqy5QntGQ ビートルズに関する記事、本、映画はたくさん出ているが、このミニ・ドキュメンタリーが特に面白いのは、ポール・マッカートニー自身の回想から直接来たものであるからだと思う. マッカートニーと有名な音楽プロデューサーであるリック・ルービンは、30分間の各セッションで、世界で最も愛されている現代音楽を生みだしたマッカートニーとビートルズに何が影響したかを、難しい質疑応答のインタビュー方式ではなく、2人の男性の間での自然な会話で巧みに編集されている. マッカートニーとルービンは両者共、音楽についての知識が豊富なので、あらゆる音楽のジャンルに関して一緒に話すことができる.マッカートニーが彼とジョン・レノンに影響を与えたものや当時の人々について話し、また彼らが一緒に作った素晴らしい作品を作成する過程を知るのは非常に興味深かった.ポールとビートルズについて、今まで知らなかった多くのことを発見でき、このドキュメンタリーを観た後、ますますビートルズが好きになった. このシリーズからの引用で、ポール・マッカートニーの言葉で面白いと思ったのは、 「振り返ってみると、あの当時、私はジョンと呼ばれる男とただ一緒に働いていた.今振り返ってみると、私はジョン・レノンと一緒に働いていたのだ.」
- 8/7/2021 展覧会にて「ある画家の絵と私」
ご案内を頂いていた「第35回記念日洋展(2021)」を大阪市立美術館新館に7月21日に観に行きました. この展示会は略100号という大きなキャンバスに描いた具象派の作品のみを展示するもので、お目当ての画家の「いにしえの光を求めて」という作品がどのような風景か、その場で観るまでは分からないわくわく感を持って大阪の天王寺へ行きました. 出展作品150点余の会場をゆっくり回りお目当ての作品の前に立つと、何か不思議な安ど感というか、以前出会ったヨーロッパの風景とそこからイメージする具象の風景との融合に引き込まれて、暫し静かに作品を味わう贅沢な時を過ごしました. 「いにしえの光を求めて」 私がこの画家の作品に初めて出会ったのは3年前の大阪・梅田の某百貨店本店で開催されたこの画家の風景画の個展で、その時のこの画家の描く“実際の風景画ではなく、さりとて空想画でもない優しいファンタジーの世界”のような独特の世界に惹かれて、その後の展示会への作品の出展を大阪の西天満、神戸のアートギャラリー、再度、昨年の大阪・梅田の某百貨店本店での個展開催等にと重ねて出掛けています. 「湖畔の朝」 私はこれまでも絵画を鑑賞するのは好きで、特に、ヨーロッパのドイツやアメリカのニューヨークに仕事で駐在していた9年間には、寸暇を惜しんで出張先の欧州ではパリやロンドン、アムステルダム、ウイーン、ミラノ、フィレンツエ、ベネチア、マドリッド等又米国ではシカゴ、ボストン等でも美術館を観て歩いていました.最近では、これまで機会の無かったロシア旅行を2018年に実現させて、サンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館を鑑賞出来たことで美術館巡りには一応の達成感を感じていた次第です. 我が家の部屋を飾る「秋深まる頃に」 この画家の作品に出会ってからは、小さな作品で気に入った絵を手元に置いてみたいと思うようになり、やっと昨年の大阪・梅田の某百貨店での個展で、その夢を実現することが出来ました. その画家の名前は有賀麻里さんと言います. 絵画鑑賞をするにしても、その絵の作者の思いがどこにあるかを、会場等で時間が許すときに話が聞けることが、大変贅沢な時間だと最近つくづく感じるようになりました.
- 7/20/2021 夏のデンバー
鹿が荒らさないようにフェンスを設け、家庭栽培もやっと始まった.天気は最高で、庭、野生の花が咲き誇っている.
- 7/19/2021 フィルム・レビュー「Anthony Bourdainドキュメンタリー」
Roadrunner:「Anthony Bourdainドキュメンタリー」 定格:R 実行時間:1時間59分 監督:モーガン・ネヴィル もしアンソニー・ボーデインの旅行映画を見たことがなかったら、彼の人生を描いたこのドキュメンタリーは恐らくあまり意味がないかもしれないけれど、あなたがこのユニークな男のファンだったとしたらなら、彼の親しい友人や仲間だけが知っている彼を語っているこのドキュメンタリーはきっと面白いと思う. アンソニー・ボーデインは、シェフ、旅行者、そして才能のある作家であった.何年もの間、私は彼の旅行ドキュメンタリーのファンであった.彼の旅行の基本ルールはレイ・オーバー(乗り継ぎ)と予約なし.各エピソードでは、ボーデインが出会った人々、訪問場所、地域の食べ物について彼の視点を紹介していた.彼の好奇心は伝染性のようで、視聴者として私は彼のエピソードの一つ一つを見るたびに心が豊かになったのを感じた.彼はきれいな写真を撮るために旅行しているのではなく、自分のすべての体験について真実を語り視聴者とそれを共有するというスタイルであった.時には、物語は生々しく、政情不安と貧困に満ちた世界の危険な場所を訪れたこともあった.また、豪華な食べ物を食べる興味深い人々でいっぱいの絶妙な場所を紹介することもあった.ボーデインはどんな話題について誰とでも話すことができた.例えば、彼は自分自身がコンゴの村人であるかのように気軽にコンゴの国家元首をインタビューした.このドキュメンタリーでは、彼に会ったすべての人が彼を身近に感じたことを語っている. ボーデインが2018年に自殺した当時は、私は大変なショックを受け、悲しかった.彼は人生で得られるすべてを持っているように見えた人だった.彼は世界のどこにでも旅行し、会いたい人に会い、やりたいことを何でもした.私は彼が若い頃にコケイン、ヘロイン、LSDに夢中になっていたことは知っていたが、彼は何年もの間この中毒に打ち勝ち、死んだときは全くクリーンであった.「なぜ? なぜ彼は自殺したのだろうか?」 この繊細なドキュメンタリーが示しているのは、ボーデインが生涯にわたって苦しんでいた「うつ病」との闘いである.彼の親しい友人や家族の多くが、外部のほとんどの人が知らなかった、彼の人物についての洞察をインタビューを通して語っている.しかし、すべてのインタビューの中で最大のものは、アンソニー・ボーデイン自身からのものであった.このドキュメンタリー監督のモーガン・ネヴィルは、何百時間もの映画を編集して、悲しく、華麗で、面白くまた難しく、そして暖かいボーデインの人間性を抽出し記録する見事な仕事を果たした.このフィルムは何も隠さず、彼の死も彼の人生の一部として語っている.恐らく、アンソニー・ボーデイン自身、きっとこの正直な描写を視聴者の私たちと共有し承認すると思う. https://www.youtube.com/watch?v=ZFh9GSu6_5w
- 6/8/2021 フィルム・レビュー「クワイエット・プレイス 2」
定格: PG-13 出演:エミリー・ブラント、ジョン・クラシンスキー、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスー 監督: ジョン・クラシンスキー 脚本:ジョン・クラシンスキー、スコット・ベック、ブライアン・ウッズ 私は通常、ホラー映画のファンではないけれど、エミリー ・ブラントと彼女の夫、ジョン・ クラシンスキーのファンなので、2018 年のオリジナル映画「クワイエット ・プレイス」の最高のレビューを読んだとき、興味をそそられた.このシリーズの第 1 作をまだ見ていない人は、続編「クワイエット・プレイス 2」を見る前に見るのは必至.オリジナルを見なければ今回封切られた「クワイエット・プレイス 2」はあまり意味がないと思う. 1 と 2 の両方、SF ホラー映画の伝統的な要素がいくつか組み込まれている.つまり、別の惑星からの生き物の到来と、それに伴う恐怖.この映画を他のSF ホラー映画と違うものにしているのは、高いレベルの演技とユニークなストーリーだと思う.私は観客がとても静かで、ポップコーンをむしゃむしゃ食べている音だけが聞こえる映画館で映画と見たことがない.最初の映画「クワイエット ・プレイス」はほとんど会話がなく、俳優たちは、手話を使ってコミュニケーションをとる.沈黙が映画の恐怖要素を一層高めている.2 番目の「クワイエット・プレイス 2」も同様だが、此方はアクションが中心になる. 「クワイエット・プレイス 2」は、最初の「クワイエット ・プレイス」では決して説明されなかった物語の原点から話が始まる.それが最初の映画には欠けていたので、観客にはありがたい.役者は皆信じがたいくらい素晴らしく、二人の子供は大人と同じく好演していて、この子供たちが映画に心を与えている.「クワイエット・プレイス 2」のエンディングは次のシリーズ「クワイエット・プレイス 3」が予測できるので、今から、大変に楽しみにしている! 「クワイエット・プレイス 2 」クリップと予告編 (2021) https://www.youtube.com/watch?v=WxtVG4W8lpk 「クワイエット・プレイス」映画の最初の10分 (2018) https://www.youtube.com/watch?v=f6MwssY8_oE
- 6/6/2021 音楽家と作品への雑感(序章)
齢(よわい)80歳を優に超え、会社生活を終えて早や十数年の間、日頃の生活の中でクラシック音楽はテレビ放送、録画してあるビデオ再生と時々の生の演奏会が主であり、若い時代に買ったレコード、CDは滅多に聴きなおす機会が無くなった昨今の私です. そこで聴きたいから買ってお蔵になっているレコード、CDを、もう1度だけでも聴くために思い付いたのが作曲家別に作品を聴きなおして、自分なりのコメントを残すことでした. あくまでも自分用のコメントであって、音楽を職業としている演奏家、作曲家、評論家、ジャーナリスト、教師などの方々に読んでもらうものではありませんし、一方では、クラシック音楽にあまり興味のない方々にも読んでもらう必要はありません. 新型コロナという人類を震撼させるウイルスが蔓延し、世界がパンデミック状態に陥ってから早や1年半が過ぎ、日本では1年間延期となった「東京オリンピック2020」が、分けもわからずに1か月半後の7月から開催されそうなこの時期に、この草稿を始めることも又意味があることかと思いつつ、先ずは第1章に「シューマン」を取り上げます. 何故、第1章がシューマンなのか? 私の中ではシューマンはロマン派の作曲家というイメージの他にはバッハ、ベートーベン、モーツアルト、ブラームス、シューベルト、ショパン等に比べて、何か簡単にはコメント出来ない作曲家であるから、それ故に先ず取り上げてはっきりしたいという程度です. 直、今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品のリストをご参考まで下記、表にしました. 2021年6月 飯田武昭(82歳) ※リストのメディアNO.の表記(R=レコード、C=CD、V=ビデオ) 第1章 ロバート・シューマン Robert Schumann (1810~56年、46歳没) ロベルト(ドイツ語読み)・シューマンはドイツのザクセン地方ツヴィンガウ生まれで、父は教養の高い書籍商、母は歌が上手かったと伝えられる.早くからオルガンやピアノに親しむ一方、自宅の書籍を読み耽っていた.16歳で父が他界し母の希望でライプチッヒ大学からハイデルベルグ大学へと法律の道に進んだ.しかし音楽への志は断ちがたく26歳から再び音楽の道へ専念することになる.ピアノ講師ヴィークの愛娘のクララに熱愛したが、ヴィークはシューマンの生活の不安定を理由に猛反対した.練習をしすぎた結果、右手の薬指を痛めピアニストとしての道を断念.結果的には裁判沙汰の末クララとの結婚が許された. ドレスデンからデュッセルドルフにも活動範囲を広げ、精神病との戦いも小康状態にあった時だが、突然部屋を飛び出してライン河に身を投ずるという事件の後、2年ほどでこの世を去った.若い頃はシューベルトのリートに感銘を受け、作曲家となってからはブラームス、ショパンなどの才能を一早く認めて著作にも取り上げる才があった. シューマンと聞くと先ず思い出す曲はピアノ曲「子供の情景」(作品15)※⑥から「トロイメライ」、交響曲第3番変ホ長調「ライン」(作品97)※①.少し詳しい人は歌曲集「女の愛と生涯」(作品47)※⑦、「詩人の恋」(作品48)※⑧辺りかと思う.考えてみればやはり副題が付いているから思い出しやすいのだろう. しかし、他の有名な作曲家に比べて著名な割には、素人なりに直ぐに思い出す曲が案外少ないのは何故かと思ってしまう.シューマンはロマン派作曲家として小品ピアノ曲が最も成功した分野であり、幻想的、抒情的な旋律が印象的だが、その人生と同じく常にどこか迷っていたのではないかと思わせる曲想が感じられる印象でもある. 改めて手持ちの分を聴きなおしてみると、上記の他にも交響曲第4番ニ短調(作品120)※②、ピアノ協奏曲イ短調(作品54)※③、バイオリンソナタ第1番イ短調(作品105)※④、同第2番ニ短調(作品121)※⑤等が特に素晴らしかった. ※①交響曲第3番変ホ長調「ライン」(作品97): ドレスデンからデュッセルドルフへ移った時の作品. 雄渾な楽想とロマンティックな香りに溢れた作品. ※②交響曲第4番ニ短調(作品120): 初演は不評で書きなおした経緯があるそうだが、幻想味を帯びた曲想によって聴きごたえある名曲. ※③ピアノ協奏曲イ短調(作品54):同時代のショパンやリストとも違った幻想的、詩的なシューマン音楽の特徴が良く出ている. ※④⑤バイオリンソナタ第1番イ短調(作品105)、同第2番ニ短調(作品121):素晴らしい. ※⑥「子供の情景」(作品15): 数週間の間に小品30曲を書き上げ、そのうちの13曲を選んで「子供の情景」とした.少年時代を思い出しながら作曲したと思われるが、子供の心を理解する大人のためのピアノ曲といえる. ※⑦歌曲集「女の愛と生涯」(作品47): クララへの強烈な愛が創作の原動力になっていて、娘時代の恋から結婚、出産、そして夫に先立たれる女の一生を主題とした8曲からなる. ※⑧歌曲集「詩人の恋」(作品48): 歌の年と言われる1840年に作曲され、詩は同時代のロマン派詩人ハイネの詩集「歌の本」からとられた. 歌曲ではあるが特にピアノの重要性が感じられる. 2021年6月3日記