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  • 6/16/2022 音楽家と作品への雑感「ボロディン」

    第8章 アレクサンドル・ボロディン Alexander P. Borodin (1833年~1887年、53歳没) グルジア系貴族の血を引いているロシア国民派の所謂「五人組」※の一人で、本職はペテルスブルグ医学大学教授で化学者.作風はディレッタント(dilettare 楽しませる・楽しむ)であり作品数は少ない.29歳で知り合ったバラキレフの国民音楽に対する情熱と理想に共感してから本格的に作曲に取り組む.しかし着手から完成までに年月が掛かり、36歳で作曲した「交響曲第1番」を好評裏に世に出した後、「交響曲第2番」※①は着手から完成まで8年を要している.36歳頃に書き始めた代表作の歌劇「イゴール公」※②は、スケッチのみの第3幕と第4幕を彼の死後にリムスキー・コルサコフとグラズノフがまとめ上げて完成した.「中央アジアの高原にて」※③はアレクサンドル2世即位25周年祝賀行事のために作曲され、「弦楽四重奏曲第2番」※④は1881年に作曲された. ※①「交響曲第2番」はロシア的な重さが無く、これがロシア国民派の音楽かと思わせる明るい親しみやすい旋律が多い.ロシア的旋律にアジア的旋律が加わった長閑(のどか)さがあり、チャイコフスキー「悲愴」などとは明らかに違うことに気づく.往年の名指揮者ワインガルトナー※は、ロシアの国民性を知るにはチャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」とボロディン交響曲第2番を聴けば十分と言ったそうだ.日本では音楽愛好家の間で通称 “ボロ2”と呼ばれている. ※②「イーゴル公」より “ダッタン人の踊り” は一番よく演奏される曲だが、ポピュラー音楽界では Strangers in Paradise という曲名で、スタンダード曲、ミュージカルのナンバー等で同じくらいポピュラーな名曲. ※③交響詩「中央アジアの高原にて」はロシア皇帝アレキサンドル2世の即位25周年に際して作曲された.広大な中央アジアの草原の情景描写の中にオリエンタリズムが濃厚に聞こえる. ※④弦楽四重奏曲第2番ニ長調は細かい弦の動きが良く響く、時にボヘミア的な、又時にオリエンタルな優しい調べが続く美しい曲.第3楽章 “夜想曲 Nocturne” は独奏用にも編曲され有名. 直、ボロディンについては、その生い立ちと人間性及び作品 ≪弦楽四重奏曲第2番≫ に関して、編集者の見事な紹介(※下記のタイトル)があるのでそちらを参照して頂きたい. ※「ロシア5人組」アレクサンドル・ボロディンーString Quartet No.2 (2/27/2021) 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.

  • 2/27/2021 「ロシア5人組」 アレクサンドル・ボロディン String Quartet No. 2

    https://www.youtube.com/watch?v=9YVd5efkUnw この演奏は1973年に録音されたボロディン弦楽四重奏団による. 当時のカルテット・メンバーは、Rostislav Dubinsky(ロスティス・ラフデュビンスキー)、Yaroslav Alexandrov(ヤロスラフ・アレクサンドロフ)、Dmitri Shebalin(ドミトリー・シェバリーン)、Valentin Berlinsky(ヴァレンチン・ベルリンスキー). ボロディンの弦楽四重奏曲 No. 2 は、ロシア音楽が好きな演奏家なら、チェリストと第一ヴァイオリニストにとっては素晴らしい作品である.曲想、テンポ、強弱の解釈はプレーヤーによって非常に異なるため、No. 2 をアマチュアが「うまく」演奏するのは決して簡単ではないが、1973年にレコーディングされたボロディン弦楽四重奏団によるこの演奏は、簡潔、自然、そして美しく演奏されていると思う.編集者の好きな演奏のひとつである.弦楽四重奏団によっては、生々しい感情、曲想の誇張が見えすぎで食傷気味になることもある.おそらくロシア音楽はロシア人でないとこれだけ自然に弾けないのか、あるいは当時の録音技術が単純だったのため、「生」のままのより自然なレコーディングになっているのかと考えたりもする. アレクサンドル・ボロディン(1833年11月12日-1887年2月27日)は著明な有機化学者であり、音楽家としてはパートタイムであった.また「ロシア5人組」のメンバー*(下記参照)の一人であり、この「マイティ・ファイブ」は卓越した19世紀のロシアの五人の作曲家達で、クラシックの世界でロシア独特の国民的スタイルの音楽を生み出した.彼らはサンクト・ペテルブルクに住み、1856年から1870年までの十数年間コラボレートし、ロシア・クラシック音楽の世界への促進に貢献した.」(ウィキペディア) ボロディンの養女の息子であり、化学の教授としてボロディンの後を引き継いだセルゲイ・ディアニンがボロディンの詳細な伝記「ボロディン」を書いている.この伝記は二部に分かれていて、一部はボロディンの人生が書かれ、二部は彼の作品が説明されていて、ディアニンならではの驚くほど詳細さで、魅力的なボロディンのプロフールが描かれている. 実際、ボロディンはとても親切で面白い人であったようである.ドイツ生まれのアメリカの詩人チャールズ・ブコウスキーは、彼の著書 「Burning in Water, Drowning in Flame」(1974)に、「ボロディンの生涯」と題されたボロディンの生涯についての詩を書いている.信憑性は別として読んでみる価値はあると思う. 1887年2月27日の彼の命日に、この曲が今日のBurton-Hillの選曲になっている.Burton-Hillは「ボロディンが女性の権利の熱心な擁護者であり、ロシアの教育の平等を促進し、サンクト・ペテルブルクに女性医学部を設立したことを知ったとき、私のボロディン像は益々高まった.なんと素晴らしい人間であったのだろう!」 *Russian Five: Mily Balakirev (ミリイ・バラキレフ、リーダー)、César Cui ェーザリ・クイ)、Modest Mussorgsky(モデスト・ムソルグスキー)、Nikolai Rimsky-Korsakovニコライ・リムスキーコルサコフ)、Alexander Borodin(アレクサンドル・ボロディン)

  • 5/23/2022 ”The Avant” 高齢者施設訪問演奏

    私が属するピアノ・トリオ・グループ、MONATS-Trioはパロアルトにあるリタイヤメント・ホーム”The Avant”で昨日、日曜日の午後(5月22日)に施設訪問演奏をした.初めの演奏は自立生活ができる居住者 (Independent Living) のホールで、次に擁護の必要な居住者のアシスティッド・リビング (Assisted Living) のホールでの二回の演奏.プログラムはピアソラの"Oblivion" (忘却)とメンデルスゾーンの"ピアノ三重奏曲op 66" で約一時間.The Avantは、正面玄関を入った直ぐのところにサロン兼ホールがあり、それぞれにグランドピアノが装備されている.約20〜25人の居住者が各ホールで私たちの演奏を鑑賞してくれた.車椅子の人もいれば、普通に歩ける人もいて、明らかに音楽を愛する方々で、たくさんの励ましの拍手を送ってくれた.私たちにとっては嬉しい聴衆であり、楽しく演奏できた演奏会であった. アーマチュア音楽愛好家、私たちについて _________________________________________________ 五十嵐恵美(ヴァイオリン) 東京で生まれ、7歳のときにヴァイオリンのレッスンを始める.10代の頃、東京で鷲見四郎氏に師事.現在アメリカと日本のアマチュア室内楽演奏家とアンサンブルを弾いて楽しんでいる.地元の弦楽器製作者であるローレンス・ハウスラー(2016年、カリフォルニア州パロアルト)に委託したバイオリンと、フランソワ・ル・ジョン(1775年、フランス、パリ)の2本のバイオリンを演奏している. Dr. ステファン・ルイッツ(チェロ) MONATS-Trio のロック(最も頼りになる存在)であるステファンはドイツで生まれ、ドイツ、フランス、米国各地で、大学のオーケストラ、様々な地元の室内楽グループで演奏してきた幅広い室内楽演奏経験の持ち主.現在、カリフォルニア州メンロ・パーク市に所在するSLAC National Accelerator Laboratory (Stanford Linear Accelerator Center)で働く物理学者. ノーマン・古田(ピアノ) 引退した弁護士であるノームは、南カリフォルニアで小学校時代にピアノを学び始め、Stanford大学法科に在学中に息抜きとして室内楽を演奏し始めた.40年後の引退により、ベイエリアの室内楽の友人と再び交流し演奏活動を再開. ノームの最新のこだわりは、4曲のブラームスの交響曲のピアノ三重奏用への編曲をみつけてヴァイオリン、チェロ、ピアノで演奏すること.

  • 5/6/2022 本のレビュー、レイティシア・ コロンバニ(Laetitia Colombani)著 三つ編み (La Tresse)

    <あらすじ> 異なる国で、三人の女性がそれぞれの人生を送っている.インドでは、社会階層では生まれながらの不可触民であるスミタ.幼い娘には教育を受けさせたいという願いから、命からがら娘と町から逃亡する.イタリアでは、両親が経営する毛髪加工会社を手伝うジュリア.父の事故死がきっかけで、倒産寸前の会社をまかされてしまう.裕福な男性との結婚が解決策だと母は言うが、近くの海岸で出会った外国人に魅かれる.カナダではシングル・マザーの弁護士サラ.都会の法律事務所で女性初の管理職への昇進も目前だが、癌の告知を受ける.その事実を隠し続けるが、偶然知った同僚たちは態度を変え、昇進は今まで眼をかけていた後輩に行ってしまう.困難な状況に無我夢中で真っ向から取り組む女性達.物語は三人三様の人生が繰り広げられるが、結果として三人の運命は「髪」を通じて繋がっていく. <ブッククラブでの感想> 「最初の部分からの読みやすさと、また映画界出身の作者だけあって、行ったこともないインドの駅での光景や、ジュリアがイタリアでインド人男性と逢瀬を重ねる海辺などは、私の心の中にも映画の様に繰り広げられる映像があり不思議でした.三人の女性には、どれも違ったレベルでの苦悩があるけれど、各々の女性が自分自身の道を見出していく強さを感じました.」 「人間は自然に打開策を見つけて生きていくことを感じることが多く、この本はそれを象徴していたかのようでした.スミタの日常は生きるか死ぬか、中東で勃発している状況と似ていて読みながら切迫感がありました.ビル・ゲイツがインドのトイレや水道を改善するチャリティの話は知っていましたが、この本を読んだときには思い出せませんでした.スミタの家族が代々してきた手袋も使わないでするトイレ掃除の様なリスクの多い仕事が少なくなることを切に願います.これついて、男友達に話したら、この階層の人の職が無くなってしまい、さらにビル・ゲイツがしているインドのトイレや下水道改善のチャリティに意味がなくなるから良くない、という感想を聞き驚きました.ともあれ、この本によって気づかされることが多々ありましたが、「スミタが髪を売り、ジュリアがその髪を加工し、サラがその髪を化学治療の後で付ける」物語の最後の繋がりの部分は「あぁ!なるほど!」と思わせられ、暖かくポジティブなものを感じました. 「三か所の異国に住む三人の女性の話が最後に髪で繋がるとても素敵な物語でした.差別や伝統的価値観による悩みと勇気ある行動を上手に紡いでいて、映画を観ているよう.インドに住むスミタの環境が一番過酷ですが、三人が自分の環境から脱出するその勇気は同じで爽やかな読後感でした.」 「この本を読んだとき、ちょうど「Me Too運動」の最中でしたが、登場人物の女性達が戦う相手は男性ではなく、彼女たちが置かれた環境と状況だと感じました.」

  • 4/15/2022 私の最愛なるジェット(from North Carolina)

    私の春のプロジェクト、庭作り、を助けてくれる私の最愛なるジェットは、人懐こい生後14か月のシェパード犬で、私が苗床の上にシートを敷くのを助けてくれているつもりです.ジェットはいつも私が取り組んでいるものの上に立ってボールを落としているので、私のプロジェクトは結局あまりかたづきません. ジェットは私の後を常に付きまとっています. 服従のためには最高ですが.、ホームプロジェクトの完了には最悪です😊 ジェット、草刈り手伝う ジェット、とても幸せ ジェット、グレンデルと綱引き

  • 1/18/2022 楽器演奏とキネマの会の道半ば ~退職後に始めた趣味の世界~(part 1 of 2)

    サックスとの出会い 約20年前にビジネスマンとしての会社生活を終える頃から楽器(サックス)演奏を始め、暫くして仲間を募って演奏グループとして「宝塚マスターズ・アンサンブル(愛称:TMA)」を立ち上げ、主として高齢者施設でのボランティアで当初は月に1~2回演奏しました.同じ時期に映画と音楽を楽しむ会として「宝塚キネマと音楽を楽しむ会」(通称:キネマの会)をほぼ毎月開催し、こちらはこれまでに220回を重ね、合計350本程度の名画の鑑賞と、時にはゲスト演奏者を招いての演奏を楽しむ会を続けてきました. サックスとの出会いは20数年前に楽器教室での体験レッスンを始めた時からで、生来の音楽好きであったとはいえ、特別にサックスが好きだったわけではありません.しかし奇妙な事に、1961年に当時は大手の繊維会社に就職して初めて赴任した大阪府南部の工場で、6カ月の経理実習をしていた間、女子バレーボール・チームのマネジャー(実際はボール拾いや声掛けと対外遠征試合の同行)を課長から命ぜられてやっていました.6か月後に兵庫県の工場へ転勤するのですが、その際にバレーボール・チームから餞別にもらった物が、何とジャズ・サックス奏者の大御所ソニー・ロリンズ演奏の1枚のレコードでした. それから数十年後に私がサックスを吹き始めた頃に、ずぶの素人女子高校生たちが吹奏楽を始めて全国優勝まで上り詰めるという痛快な映画「スイング・ガールズ」が大ヒットしました.この映画のモデルとなった高校は諸説ありましたが、その内の一つ長野県のある高校の指導部の先生にアポを取り、同校を訪問し映画撮影までの秘話をお聞きました. 当時のレコードジャケット⇒ 訪問した長野県のある高校の映画「スイングガールズ」関連展示物 「映画・ミュージカル・楽器演奏 ~感動が生き方を変える~」ミニ演奏会開催 思い起こせば、2006年に「映画・ミュージカル・楽器演奏 ~感動が生き方を変える~」というタイトルで、現在の自宅のある兵庫県宝塚市の「ソリオ・ホール」で市民を対象に全4回の講演とミニ演奏の会を開催したのが、その後の私の活動の端緒であったと思います. 元来音楽好きだった私はサックスに出会ってからは、勿論上手に吹きたいとは思っていましたが、それよりも好きな曲をどんどん吹きたいという思いが先に立ち、映画音楽、ミュージカル、クラシック、スタンダード、カンツオ―ネ、ジャズっぽい曲、演歌、童謡などレパートリーは急増しました.近年は楽譜はあまり出回ってない往年の名画の音楽(例えば「パリの屋根の下」「めぐり逢い」など)を、講師の先生にCDを聴いて頂き、音符を起こして頂いて(いわゆる採譜)サックスで吹くといった方法でも曲数はより増えました. サックスは19世紀中ごろにベルギーのアドルフ・サックス氏が発明した楽器で、2014年がアドルフ・サックス生誕200年に当たり、世界各地でイベントが開催されました.私は運よくその年にオランダとベルギーに2週間家族旅行で行く機会があり、アドルフの生誕地ベルギーのディナン(Dinant)市まで足を延ばし、ムーズ川に架かる長い橋の全欄干にカラフルな楽器サックスを飾り付けているという、極めて特異な景色を見る事も出来ました. ムーズ川に架かる長い橋の欄干(ディナン市)      アドルフ・サックス・ミュージアム前 「宝塚マスターズ・アンサンブル」などでサックスを吹く場所は高齢者施設でのボランティア演奏が中心ですが、他に演奏した思い出の場所では、「宝塚文化創造館(旧宝塚音楽学校校舎)」のオープニング、兵庫県篠山市のビレッジ、宝塚西谷の森公園、奈良市、大和郡山市、守口市、枚方市、西宮浜、吹田市千里、大阪市の堂島、梅田ハービスENT、天満橋、新大阪や横浜市港北区日吉、東京都港区三田、N.Y.州のシラキュース市、ミズリー州セントルイス市などで、さすがに最近は宝塚市内が活動の主たる場所に落ち着きました. 結成当時のTMAメンバー      ピアノとサックスの二重奏風景 オープン当時の「宝塚文化創造館」 「宝塚キネマと音楽を楽しむ会」 「宝塚キネマと音楽を楽しむ会」は、当初は会場として宝塚市内の2つの公民館を使って映画の上映やゲスト演奏者の演奏をしていましたが、映画上映のための機材(プロジェクター、DVDプレーヤー、音声再生機、コード類他)を自宅から大型の旅行用スーツケースに入れて、電車を乗り継いで運び、現場で組み立て、終了後に片づけて自宅へ戻す迄の作業と更に公民館の部屋取りも行い、その上に上映作品の選定と来場者へのプログラム作成など、相当に好きでもなければ出来ないことをやってきました.数年前から会場を自宅マンションの「集会室」を借りることに変更したので時間的な負担は半減しました.映画上映や演奏が終わると会員同士の親睦を目的に公民館の日本間や居酒屋で乾杯をするのも楽しみで、また春秋には自宅近くの山小屋風の宿を借りて、映画及び音楽仲間と美味な神戸牛でのすき焼きパーティを開いてきました. 「宝塚キネマと音楽を楽しむ会」の仲間たち 山小屋風の宿でのランチ・パーティー風景 筆者後記: 本稿は5~6年前に以前に勤めていた企業のOB会の季刊誌に投稿した文章を現在の自己の状態に照らして一部表現を改めたもので、修正しても直、冗長な表現であったり、分かりにくい部分が多いと思いますが、オリジナリティを損なわない程度に留めたので、その点をご理解いただきたくお願いする次第です.’Part2’ 私の「クラシック映画論」も宜しければご笑読ください.

  • 1/18/2022 楽器演奏とキネマの会の道半ば ~ 私の「クラシック映画論」~ (part 2 of 2)

    私の「クラシック映画論」 昔の映画は名作・佳作が多いと思いますすが、世代が変わると説明しても中々に伝わり難いのが常で、数年前から私が思う「クラシック映画論」について、以下のように説明すれば他の人に分かりやすいかな~と思うようになりました. 現代は兎にかく毎日が忙しい!!! IT(またはコンピューター)が発達し、情報はスマホやラインで見たりやり取りする社会がその傾向を一層助長しているように思えます. 私の生きてきた時代も高度経済成長期であり、大変忙しかったように思いますが、ITがまだ未開発の時代だったので情報を瞬時に取得することは難しく、情報のある所や場所へ出向く(アクセスする)必要がありました.つまり、辞書や百科事典を紐解いたり、新聞や雑誌を見たり、映画を見たり、音楽会を聞きに行ったり、レコードを聴いたり、絵画展に行ったり、読書をしたり... この中で前半部分、すなわち辞書や百科事典を紐解いたり、新聞や雑誌を見たりが、ITの発達のおかげであまり必要とされなくなりました.そして後半部分、つまり映画を見たり音楽会に行ったり、レコードを聴いたり絵画展に行ったり、読書をしたりは、映画を見たり以外は、音楽、図工、国語といった小中学校で知育として学ぶ授業の課目にある分野であり、好きか嫌いかは個々人で違うにしても、基礎的な知識と実技は学ぶ機会のある芸術文化であることが分かります. 音楽についてはクラシック音楽の歴史について、バッハ、ヘンデル、ハイドン、ベートーベン、モーツアルト、ブラームス、ショパン、メンデルスゾーン、チャイコフスキーやドビュッシー、ラベル、ビゼー、ムソルグスキーなどから近代のヒンデミット、ベルグや武満 徹まで名前は教科書にも出てくるし、ピアノやオルガンを伴奏に歌を唄い合唱するという授業もあります.絵画も図工の時間に、画家の歴史について、ボッティチェリー、ミケランジェロ、ラファエロ、ミレー、コロー、レンブラント、モネー、ルノアール、ドガ、ターナー、ピカソ、ゴッホ、クリムトなどの名前と代表作が教科書に印刷されていたし、西洋文学ではシェークスピア、ヘルマン・ヘッセ、トルストイ、ドストエフスキー、ヘミングウエイ、日本文学では森鴎外、樋口一葉、夏目漱石、山本有三などを必ず思い出します. 映画は娯楽か芸術か「クラシック映画論」 映画を芸術文化と認めるか否か、つまり単なる娯楽か大衆芸能と考えるかどうか議論の分かれる所かと思いますが、学校の授業では取り上げられないこともあり、また一本の作品を鑑賞するには最低でも2時間程度は時間を必要とします.又どれが良い作品なのか分からないし、私の思う良い作品は殆どが1940年代、50年代、60年代に集中していて、それらの作品を見る機会はなかなかない.感動を呼ぶ良い作品(傑作とか秀作)に行きつかないのが現代の社会ではないかと思います.傑作・秀作と呼ばれる映画は、原作や脚本及びテーマがしっかりしているものが多く、それを支える監督、俳優、キャメラ、音楽がまたしっかりしているためだと思います. 1970年代以降に制作された映画は、強い刺激を求める人たちには満足のいく作品かも知れませんが、観る人に感動を与える良い作品は極めて少ないと言っても過言ではありません. 依って、現代の人たちが少ない時間を割いて劇場で見る映画は、例えば文学で言えば古典を読むことなく、いきなり村上春樹やカフカを読んだり、絵画で言えば印象派の絵画を鑑賞することなく、いきなりピカソや池田満寿夫の作品を見ていたり、音楽で言えば古典派やロマン派の名曲を聴かずして、ベルグや武満 徹の音楽に接している可能性が高いと思います.どんな芸術文化でも同じですが、良い作品に出合うまでには、その数倍又は時として数十倍もの平凡な作品や駄作、見るに値しないくだらない作品を見聞きする中から、良し悪し (好き嫌いも含めて) の価値基準が自ずと自分の中に出来てくるもので、その過程もまた大切だと思います.しかし、現代社会はあまりにも忙しいのと、映画に関してはもう一つ厄介なことに、作品の保存状態で経年劣化してカラー物は色彩が衰える度合いが、他の芸術文化の作品に比べかなり激しいので、古い時代の映画を沢山見ることは、殆ど不可能に近いと思います.音楽ではレコードが同じように劣化しますが、音楽の場合には作曲家の作品の演奏であり、演奏者の作品の劣化であって、映画のオリジナリティとは少し異なると思います.私の思う感動をもらう良い作品(傑作や秀作)は、1960年代以前に殆ど制作されていて、従って、それらの事を私は「クラシック映画論」という呼び名で理解して頂こうと思うようになりました. 筆者後記: 本稿は5~6年前に以前に勤めていた企業のOB会の季刊誌に投稿した文章を現在の自己の状態に照らして一部表現を改めたもので、修正しても直、冗長な表現であったり、分かりにくい部分が多いと思いますが、オリジナリティを損なわない程度に留めたので、その点をご理解いただきたくお願いする次第です. ’Part 1退職後に始めた趣味の世界’ も宜しければご笑読ください.

  • 1/12/2022 Mendelssohn Octet E flat major, op. 20 (メンデルスゾーン八重奏曲、op.20、変ホ長調)

    1825年10月15日、メンデルスゾーンは16歳のときに、最初の(議論の余地がないと言われている)傑作 オクテット(八重奏曲)op.20  変ホ長調を完成させた. メンデルスゾーンは、彼の親友でありヴァイオリン教師であったエドワード・リッツ(またはエドゥアルト・リッツ、1802年10月17日ベルリンで生誕、1832年1月22日ベルリンで死没)への誕生日プレゼントとしてこの作品を書いた. 1年後17歳で、彼のもうひとつの傑作であるシェイクスピア劇「真夏の夜の夢」の序曲を完成した. これらの二曲は、彼の初期の作品の中で最もよく知られている傑作である. ヴァイオリン4本、ヴィオラ2本、チェロ2本(二重弦楽四重奏)のために書かれたこの作品は、新しい室内楽のジャンルを生み出した. コンラッド・ウィルソンは「その若々しい活気、輝き、完璧さは、19世紀の音楽の奇跡のひとつである」と述べ、メンデルスゾーン自身その公開スコアで「このオクテットはすべての楽器が交響楽団のスタイルで演奏する必要がある.ピアノとフォルテ(曲の強弱)は厳重に観察し、このキャラクター(強弱)を通常よりも強く強調する必要がある」と指示した. 作品は4楽章からなり、通常は約30分の演奏で、最初の楽章は最も長くその約半分を要する. アレグロ・モデラート・マ・コン・フオコ(変ホ長調) アンダンテ(ハ短調) スケルツォ:アレグロ・レギエリシモ(ト短調) プレスト(変ホ長調) ジャスパー・ストリング・カルテットとジュピター・ストリング・カルテットが演奏するオクテットを聴いたが、その素晴らしい execution (弾き方の技術・実行) が印象的だった.メンデルスゾーン自身が特に気にいっていたといわれるこの曲、お薦めの一曲である.

  • 12/17/2021 今年も大変な年になりました

    多くの方々にとって、今年もまた大変な年になりました.健康でよい新年をお迎えくださいますよう心から願っております.私は年末年始メンロパークの自宅で過ごしますが、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の状況が悪化しなければ、3月中旬から日本へ、晩春にはパリへと予定を立てております.今年は数回帰国を断念しなければならない状況になり大変に残念でしたが、2年以上米国に釘づけのあと、来年からやや「通常に近い」生活に戻れますよう願っています. 長かった「在宅」で得られたこともありました.バイオリンを練習する時間が増えたこと、アンサンブルをできるだけ友人とご一緒したこと(音楽の友人たちに感謝)、当ブログ(www.emimusicfriends.com)を始めたこと(ご投稿頂いた皆さまに感謝)、散歩が生活の一部になったこと、近しい友人たちと外食をせず自宅で会食する機会が増えたこと、依って一年中料理をしていました. 私のピアノ・トリオ・グループ、MONATS-Trioに、夏から新しいピアニストを迎え、来年2月26日土曜日にリサイタルを2年ぶりに開催することになりました.米国、Bay Area にお住まいでしたら、是非お遊びにいらしてください. 引退してから早10年.「生産性」の非常に低い毎日を送っていますが、ようやく、ペースの遅い「非生産的」な生活を楽しめる心境になりました.このライフ・スタイルの変化は、コロナ禍による「在宅」が強制されたことによるものであるかとも思われます.また、このスロー・ライフを過ごす過程において、幸せとは亡夫の人生のモットーであった “something to do, someone to love, and something to hope for.”「好きなことをして、人を愛して、そして常に希望をもつこと」であることを改めて実感した次第です. 2022年の干支は虎、私は年女です.虎がどうして干支の「3番目」かという中国の伝説を最近読んだのですがご存じでしょうか.干支の順序を決めるために、諸々の動物が競う中、虎は自分のスピードと活力がほかの誰にも負けないと確信していたそうです.しかし、虎が最初だと思って川からあがったときに、既に鼠(亡夫の干支)がその狡猾さで1位になり、牛(兄の干支)がその勤勉さで2位になったことを知りました.よって、ジャングルの王の「虎」は3位に落ち着くことになったそうです😊😊😊. 虎には魔よけの意味もあるそうです.2022年が皆さまにとって、健康第一で、安全な、多幸の一年になりますよう心から願っております.また本ブログへのご投稿お待ちしております.本年もよろしくお願いいたします.

  • 11/27/2021 フィルム・レビュー「スペンサー」

    ドラマ 定格:R スター:クリステン・スチュワート、ティモシー・スポール、ジャック・ファーシング、サリー・ホーキンス 監督:パウロ・ロレーヌ ライター:スティーブン・ナイト 映画は次の言葉で始まる「(このフィルムは)本当の悲劇からの寓話」.この引用に私はこの映画にちょっと躊躇感を覚えた.このフィルムを観ている間、私は常に自分にこう問いかけていた.「これは本当に起こったことなのか、あるいは純粋なフィクションなのか?」と.映画館を出た後、私はこのフィルムまたダイアナ妃に関して調べてみた.そして映画のいくつかのものは事実に基づいていていても、映画のほとんどは作家、スティーブン・ナイト、の架空の記述だということを知った. この映画は、英国王室が毎年クリスマスを過ごすサンドリンガム城を再現するためにイギリスとドイツのさまざまな場所で撮影された.期間はチャールズとディアナの結婚の終わりの時期にあたる. 私にとって最も興味深いシーンのひとつは、映画の早い段階で登場した.それは、皇室一族が3日間の休暇過ごすその前に到着して、サンドリンガム城で諸々の準備をする側近を映している.トラックが次々と私道を下りてくると、制服を着た男性の大勢のスタッフが、手の込んだ食べ物、花、ワインを素敵なバスケットに入れてキッチンに運ぶ.彼らがセットアップを完了すると、キッチンの上の「静かに! 彼らはあなた達の声を聞くことができます」と書かれたサインをカメラが静かに左から右に写す.この骨を冷やすようなサインは物語のトーンを始めに設定し映画全体に流れる. 映画の焦点は、ダイアナがチャールズとの結婚の終末期に信じられないほど不幸であったかにあり、彼女が常に不機嫌で、落ち込んでいて、子供のように振舞っていたことを描写している.象徴的に、彼女はアン・ブーリンについての本に夢中になっていて、アン・ブーリンが時々彼女と一緒にいることを想像することによってアンの窮状を自身の立場と関連させる.ダイアナが子供の頃の家に侵入し、ホールで踊り、野原で走っている夢のようなシーンもあるが、これには私は少々閉口した.ダイアナを演じたクリステン・スチュワートは、ダイアナのアクセントをよく真似て演じたとは思うが、私は彼女が演じるダイアナを本当に気の毒には思わなかった.実際、ウィリアムとハリーを演じた少年たちは、彼女の気分のむらと感情的の犠牲者だったので、私はかえって幼い彼らを気の毒に思った. ファッションが好きな人のために、スチュワートはダイアナがこれまでに着ていた数枚の最も有名なドレスを着ているシーンがある.なぜそれが映画に登場したのか私には意味がわからないが、衣装部門の努力とスキルは素晴らしいと思った. 映画は観て楽しかったし、セットのデザインと衣装は大変によいと思ったが、結局、ダイアナ自身がこのフィルムを観たとしたら、決して彼女は、映画の中のダイアナに関する解釈と表現を好ましく思わなかったのでないかと感じた. https://www.youtube.com/watch?v=Lagauhb5GyY

  • 10/4/2021 フィルム・レビュー「芸者の回顧録 Memories of A Geisha」

    PG-13 出演:チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、大後寿々花、マコ、コン・リー 監督:ロブ・マーシャル プロデューサー:スティーブン・スピルバーグ 音楽:ジョン・ウィリアムズ 上映時間:2時間25分 最近、エミさんとランチをご一緒したときに、日本の芸者の話題になった.アメリカ中西部出身の私にとって、この話題はいつもエキゾチックに聞こえ、そして彼女たちは常に非常に美しく見えた.エミさんとの会話は主に芸者の「芸事」についてで、私はもっと知りたいと思った.その晩、何年も前に芸者についての映画があったことを思い出し、2005年にデビューした「芸者の回顧録、Memories of A Geisha」という映画を早速観た. このドラマは、1920年代に京都の置屋に売られた千代という9歳の少女の架空の物語であり、第二次世界大戦後まで彼女の人生を追っている.別の置屋に売られていった妹から離れて暮らすことは、9歳の子供にとって非常にトラウマ的な体験である.千代は置屋の女中で幼いながらこき使われ、置屋によい収入をもたらす人気者の年上の芸者に虐待される.置屋の女将は、千代が故意で不従順であるため、名前を「さゆり」に変える.少女はもはや自分の名前さえ持っていない. さゆりは芸者の生活に魅了されるが、女将は高額な修行をさゆりにさせることを拒む.偶然にも、さゆりは彼女がもつ独特な何かに惹かれ、彼女の諸々の芸事にかかるお金を払う親切な紳士と出会う.そしてさゆりは芸者として厳しい芸事の修行に乗り出す. この回想録は、アメリカの作家アーサー・ゴールデンが書いた同名の小説に基づいている.ゴールデン氏がこの物語を作るためにどのような研究をしたのか私には解からないが、彼が芸者に関する独特の文化および背景に忠実であったことを願っている.ジョン・ウィリアムズの音楽はこの映画に素晴らしいアンダートーンを設定し、撮影も素晴らしい.スティーブン・スピルバーグのプロダクションの手腕も素晴らしい. 但しこの映画について言えるのひとつの問題は、女優の多くが日本人ではなく中国人であるということだ.これはハリウッドのせいにするしかない!しかし、すべての俳優は素晴らしいパーフォーマンスで、物語は悲しくも美しい. https://www.youtube.com/watch?v=4L-xlmakQvc https://www.youtube.com/watch?v=YFhNH2KdG9k

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