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  • 執筆者の写真Kathy Price

10/31/2022 フィルム・レビュー "ター" TÁR

ドラマ・音楽

レーティング: R言語と短いヌードの描写

出演: ケイト・ブランシェット, ニーナ・ホス, ノエミ・メルラン, ソフィー・カウアー

監督:トッド・フィールド

脚本:トッド・フィールド

クラシック音楽の国際的な世界を舞台にしたこの映画は、現存の最も天才的能力を持った偉大な作曲家兼指揮者の ひとりと考えられているリディア・ ターを中心に描いている.クラシック音楽の世界では非常に珍しいことではあるが、彼女は女性で初めてベルリン交響楽団の首席指揮者になる.優秀な作曲家兼指揮者、この組み合わせが、リディアに 権力、POWER を与える.

半面、リディアの非常に敏感な聴覚は、しばしば彼女の気を散らし、様々な形で雑音として彼女の日常生活をおびやかす.ドアベル、メトロノーム、女性の叫び声、水が滴る音、等々は彼女を圧倒し、最終的には彼女を破壊的で感情的な道に導く.


私はクラシック音楽が大好きだが、楽器を演奏することも、楽譜を読むこともできない.クラシック音楽の訓練を受けたミュージシャンであることがどのように感じられるかについて、私には何も解らない.しかし、この映画は私にとって非常に啓発的であった.クラシック音楽の芸術が他のビジネスと同等に(あるいはそれ以上に)競争的で政治的であるとは考えもしなかった.この映画は、音楽についてよりもそれにまつわるPOWER、権力についての映画だと思う.権力は善にも悪にも使える.営利目的か芸術目的かは問わない.権力は、武器にも道具にもなり得る信じられないほどの”力“である.


この映画は理解するのが難しい場面がたくさんでてくる.強烈、また残忍でもあり、時に意味が不明瞭な場面もある.それらは狂人ともおもわれる芸術家から発せられるものであり、理性的な心の状態の常人には理解しがたいものなのかもしれない.この映画は、強者と弱者の戦いでもあり、だれが権力を持ち、その権力者がどのようにその権力を使うかについて、強力な声明を出しているのではないかと思う.


ケイト・ブランシェットは私の大好きな女優の ひとりである.この映画は彼女がこれまでに演じた中で最高のパフォーマンスの ひとつだと思う.この映画では、ブランシェットは彼女の創造性の頂点にいる.少なくとも、この映画を観て、キャリアの頂点に立つ女性を目の当たりにすることは価値があると思う.映画の早い段階で、彼女のキャラクターであるリディアがジュリアードでクラスを教えているシーンがある.それは激しく、残忍で、難しい対話に満ちてる.この5分間のシーンをブランシェットはノンストップ、ノーカットで演じる.改めて彼女は素晴らしい女優だと感じた.


トレーラー:

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