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  • 執筆者の写真Kathy Price

3/6/2021 フィルム・レビュー「マンク」

主演 ゲリー・オールドマン、アマンダ・サイフリッド、リリー・コリンズ

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「市民ケーン」は、米国でこれまでに製作された中で最高の映画として認められることが多く、オーソン・ウェルズの名前は「市民ケーン」の共著者、監督、スターの同義語になった.「マンク」は、この有名な映画「市民ケーン」のもう一人の作家であるハーマン・J・マンキーウィッツに焦点を当てている.


ゲリー・オールドマンが演じるマンキーウィッツは1930年代から1940年代にかけて活躍したニューヨークのジャーナリストで、「アメリカ人」と題した映画の最初の原稿を執筆するために雇われ、ハリウッドに来る.カリフォルニアに到着してすぐに自動車事故に遭ってしまい、マンク(マンキーウィッツの綽名)は台本を書くために砂漠のゲスト・ハウスに閉じ込められる.このゲスト・ハウスで、マンクが事故から回復し、確実に仕事を成し遂げるためのサポートとして、ドイツ人のセラピストと英国人の秘書があてがわれ、彼女らはマンクとゲスト・ハウスに同居する.マンクはアル中の上、ヘビー・スモーカーでもあり、セラピストと秘書の仕事は困難極まりない.

この映画には幾つかのテーマがある.焦点は脚本を書くプロセスである.タイプ・ライターが各シーンの始まりにそのセクションのタイトルを映像として打ち出し、作家の視点を伝える.その他に、マンクと彼の妻、彼をサポートしている女性たち、そして彼の友人や彼の敵となる人達とマンクとの人間関係、これらすべてが映画のテーマとなっている.最も重要なテーマのひとつは当時のハリウッドの政治と国際関係.MGM映画、ルイス・B・メイヤー、ウィリアム・ランドルフ・ハースト、マリオン・デイビスと第二次世界大戦はこの映画の物語に織り込まれている.政治、時代の背景を説明するために多くのフラッシュバック・シーンが使われ、時によって、どの時代が映されているのかを知るのが困難になることもあるが、それにも増して、演技とビジュアルは魅力的である.


デヴィッド・フィンチャー(作者兼監督)は、オリジナルの「市民ケーン」のスタイルで各シーンを美しく作り上げ、白黒で撮影されたセット、衣装、音楽は、その時代をよくあらわした.その上、フィンチャーは、小さな白い点をフィルムに埋め込み、当時、映画のオペレーターに「フィルムの次のリールをプロジェクターにロードせよ」という合図であったこの昔の映画のトリックまで加えた.


「マンク」は映画愛好家のための映画だと思う.聴衆の注目を集めるカー・チェイスやセックス・シーンはない.「タイタニック」や「スター・ウォーズ」のような大興行映画になることは恐らくないと思うが、才能ある作家であり、何が彼にやる気を与えたのかを描いた、男の人生の映画だと思う.


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