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- 3/12/2024 音楽家と作品への雑感「シベリウス」
第12章 ジャン・シベリウス (Jean Sibelius) (1865年~1957年91歳没) シベリウスはヘルシンキ大学で法律を学び、その後に音楽に転じ、ヘルシンキ音楽院で国民音楽の祖と言われる人物に出会いベルリン、ウイーンに留学. 題材をフィンランドの伝承叙事詩「カレワラ(Kalevala)」に求め、標題音楽と交響曲に優れた作品を残した. ※交響曲第2番 ニ長調:イタリア滞在中の印象を反映させた1902年完成の曲で、一般的に一番多く演奏されるようだが、第4楽章を除いては演奏ボリュームの増減幅が大きく、私にとっては聴きずらい曲だ. ※交響曲・第4番 イ短調:情熱と暗い幻想を宿した内面的な楽想には通俗味はないが、この曲を彼の最大傑作と認める人も少なくないというが、私にはやはり暗いイメージが払しょくできない. 交響詩「フィンランディア」が彼の最高傑作だと私には思える. ※ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47:交響曲作曲家シベリウス唯一の協奏曲.第1楽章はやや難解.第2&第3楽章は綺麗なメロディもあり聴きごたえある.アンネ・ソフィーネ・ムッターと諏訪内晶子の演奏を聴いたが両方とも素晴らしい演奏だ. ※セレナーデ 第1番&第2番及びユーモエスク 第1番:いずれも楽器ヴァイオリンの音色を最大限に聴かせる曲と感じたが、演奏家にとっては難曲ではないかと思われる. ※交響詩「フィンランディア」 作品26 帝政ロシアの圧政から逃れたいとのフィンランド国民的な強い想いを現した力強い曲想. ※交響詩「タピオラ」「トウオネラの白鳥」は灰色の景色の曲で、好みには合わない.「レンミンカイネンの帰郷」は行進曲風のリズム感が良い. 7つの交響詩を残したシベリウスは20世紀最大のシンフォニスト(交響曲作曲家)の一人と考えられている.シベリウスの交響詩は北欧伝説に出てくる「カレワラ(Kalevala)」やフィンランドの自然にまつわる神話に基ずいて作曲された. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記の表にした.
- 11/8/2021 音楽家と作品への雑感「メンデルスゾーン」
第3章 フェリックス・メンデルスゾーン(-バルトルディ) Felix Mendelssohn-Bartholdy (1809年~1847年、38歳没) メンデルスゾーンがドイツ・ハンブルグで生まれたと書物には書かれているが、彼の生家がどこだったのかは、通算5年間ハンブルグに住んでいた小生には分かっていない. 同じように、ハンブルグに生を受けたブラームスの場合は、生家と博物館らしき物が現存するのに比べ、裕福な家系で恵まれた環境で教育を受けて育ち、神童と呼ばれるほど幼くして音楽の才能に溢れていたのに、その生家が少なくとも一般には公開されていないのは何故なのかと小生は未だに不思議な気がしてならない.ユダヤ系の祖父は哲学者でモーゼス、父は銀行家でアブラハムという名前だけでも凄いと思うが、幼くして一家はベルリンに移った.ライプチッヒ音楽院の設立により19世紀の音楽界へ大きな影響を与えたこと並びに当時は忘れかけられていたバッハ音楽に傾倒し、その復興に大きな役割を果たしたことは数々の名曲の作曲以外の彼の大きな功績である.ドイツを離れた時期にはイギリスには度々、イタリアにも出かけていて、その印象を交響曲第3番「スコットランド」、第4番「イタリア」として作曲している. メンデルスゾーン作曲と言えば、真っ先に思い起こすのが甘美なメロディーの「バイオリン協奏曲」※③であり、交響曲第3番「スコットランド」※①、第4番「イタリア」※②だと思う.他にも管弦楽曲「真夏の夜の夢」、序曲「フィンガルの洞窟」※④なども良く聞くが、他の著名な同時期の作曲家に比べて、普段に演奏される作品数は意外と少ないことに改めて気づいたが、私の感覚は実際に正しいかは確かめていない. ところで、メンデルスゾ-ンの有名な「結婚行進曲」は「真夏の夜の夢」の第8曲目の一曲だが、同じように日本では有名なワグナーの「結婚行進曲」は楽劇「ローエングリーン」の第3幕の一曲である.ヨーロッパでは「ローエングリーン」が、あまりにも悲劇的ストーリーなことで、ワグナーの「結婚行進曲」は結婚式には向かないと思う人が多いことは時に知っておく必要がある. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品のリストをご参考まで下記、表にした. ※①交響曲第3番イ短調(作品56)「スコットランド」:1829年にイギリスに演奏会で出かけた時に作曲を始め、完成したのは13年後の1842年で、全4楽章は切れ目なく演奏される. ※②交響曲第4番イ長調(作品90)「イタリア」:1831年のイタリア旅行中の印象を作曲したもので、豊かな旋律、軽快なリズム、終楽章のローマの舞曲(サルタレロ)で、イタリアの印象が強く出ている馴染みやすい曲. ※③バイオリン協奏曲ホ短調(作品64):メランコリックで甘美なソロ旋律で始まるメンデルスゾーンを代表する名曲.着想から完成まで6年間も費やしていて、ライプチッヒのゲヴァントハウス管弦楽団のコンサート・マスター、F. ダヴィッドに献呈された. ※④序曲「フィンガルの洞窟」作品26:ロンドンへ演奏旅行中にスコットランドの島の奇勝の大洞窟を見学した印象を描いたとされる一流の風景画家を思わせる曲. 2021年11月7日記
- 4/12/2022 音楽家と作品への雑感 「シューベルト」
第4章 フランツ・ペーター・シューベルト Franz Peter Schubert (1797年~1828年 31歳没) 第4章にシューベルトを選んだ理由は何故か? 一昨年 (2020年) はベートーベン生誕250周年記念の年、昨年 (2021年) は5年振りのショパン国際コンクールの年で、それぞれの年に対象の作曲家の作品を演奏するコンサートやテレビ放送が非常に多く、少々聴き飽きた一方、シューベルト作品を聴く機会が少なかったので、じっくりと聴きたいと思った次第. ウイーン近郊のリヒテンタール (Lichtental) に生まれたシューベルトは、農民出の教師の父親の最初の妻との間の14人の子供の第4子だった. 幼い頃に父や兄から楽器の手ほどきをうけ楽才を発揮していたが、12歳で王立礼拝堂の児童合唱団員として神学校コンヴィクト (Konvikt) に入学. 初等から高等学校までの課程を修了すると共に音楽の専門教育を授けられた. 16歳でコンヴィクトを去り、父親の手助けをし師範学校に通いながら作曲活動を始めたが、楽器演奏は左程の才能が無かったようで、音楽教師をしながら弟子たちからの支援で生計を立てていた. 生地リヒテンタールの教会で初演した 「ミサ・ヘ短調」 のソプラノ歌手、テエレーゼ・グローヴ (Therese Grob) 、に想いを募らせたが彼の内気な性格で実らなかったが、その後、19歳頃から作曲した「交響曲第4番」「第5番」や「鱒」「死と乙女」などでは、既にシューベルトの歌曲作曲家としての作風の充実と完成を見せている. 20歳の頃、以前から世話になっていた詩人の F.ショーバー (F. Showbar) の紹介で知り合った20歳年上のバリトン歌手、ヨハン・フォーグル (Johann Vogel)、 と無二の親友になり、シューベルトのリード(歌曲)が彼の公開演奏で好評を博し、良き友人の助力で彼の名声は次第に高まり、シューベルトを中心とした友人たちの集まり「シューベルティアーデ」 (Schubertiade) が結成された. 20歳代後半に「美しき水車小屋の娘」「冬の旅」や「交響曲第7番《未完成》」等を次々と作曲し、30歳の時に尊敬していた同じウイーンの大作曲家ベートーベンが3月に没し、彼も松明を持って葬列に参加している. その年の9月にはグラーツ (Graz)を訪れ自作の演奏会を開いて快適な日々を送り、「即興曲」「楽興の時」など作曲した. その翌年3月の自作発表会で大成功を収め、初めて大金を手にした彼は借金を返済し、友人にご馳走し、念願の新しいピアノを買って大金を使い果たした. その年の10月にハイドンの墓参に出かける旅立ちをした. その後は健康が急激に悪化し11月にチフスと診断され生涯を閉じた. 本人のうわ言を尊重して遺骸は尊敬するベートーベンの墓の近くに埋葬された. 交響曲第8番 「ザ・グレート」 は聴きとおすのが大変な長さだと、学生時代にレコード観賞会で講師が紹介していたことを時々思い出すが、私の今の年頃には丁度良い長さに思えて、心が休まる旋律が流れる大変な名曲と感じる. 聴きなれたカール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴くと私は特に落ち着く. 又、デーヴィット・ジンマン指揮NHK交響楽団 (2009年) 演奏も大変に楽しめる. 交響曲第7番「未完成」も劣らぬ名曲だが、副題が 「未完成」 と言うだけあって、もう少し長く聴きたいと思うのは勝手な贅沢かも知れない. 交響曲第2番はモーツアルト的だが第4番 「悲劇的」 になるとベートーベン的な弦の重厚な響きが随所に聴こえる. ピアノ曲 「楽興の時」 は歌曲を彷彿させる美しい旋律が随所に表れ、特に第3番(ヘ短調) はNHKの音楽番組のオープニングにも使われてから一般にも愛好されている. ピアノ五重奏曲 「鱒」 は眞に名曲. ヤン・パネンカ (ピアノ) とスメタナ四重奏団の録音は聴く度に魂を揺さぶられるほどの名演奏、名録音だと感じる. ピアノ三重奏曲第2番は長調ながら悲しげな短調的旋律が随所に流れシューベルトらしい名曲だと思う. 最後のピアノソナタ第21番は眞に神聖な天上の音楽と言うにふさわしい至高の傑作である. 歌曲集 「美しき水車小屋の娘」 は歌唱力のあるディートリッヒ・フィッシャーディスカウの演奏で、ごつごつしたドイツ語の発音を緩急の曲がほぼ順番に並べられた美しい歌曲を全曲通して聴くことができる. 歌曲集 「冬の旅」 はハンス・ホッターの歌で全曲をこれまで数度聴いたが 「おやすみ」「菩提樹」「春の夢」 以外は暗い曲であまり好きになれないのが正直なところ. ずうっと現代に近いクリスティアン・ゲルハーヘル (バリトン) とゲロルト・フーバー (ピアノ) の全曲を聴いたが、こちらは遥かに聴きやすく歌詞が説得力ある内容として伝わってきた. 作曲家の死の1年前に書かれた曲で、死に対する不安、恐怖、絶望などが表現されているのか. かのアインシュタインによると、シューベルトが偉大な作曲家になったのは、連弾曲が友情の証だから…とか、ピアノ連弾にも佳作が多い. シューベルトの曲は簡潔な中に高い芸術性がある気がする. シューベルト曰く、「私が愛を歌う時、それは苦悩となる. 私が苦悩を歌う時、それは愛となる」. 眞に、至言であると思う. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.
- 5/5/2022 音楽家と作品への雑感「リスト」
第5章 フェレンツ・リスト Ferencz(Franz)List (1811年~1886年 74 歳没) リストは当時のオーストリア帝国領内のハンガリー王国の寒村ライディング(Raiding)で生まれた.父親はハンガリー貴族エステルハージ侯(Marquis Esterházy)の執事、母はドイツ人だった.両親が音楽に造詣が深かったことから自然にピアニスト及び作曲家としての道を進んだ.本人は生涯を通じてハンガリー人としての気概は高かったがハンガリー語は話せなかった.パリのサロン生活でフランス語に精通し、ショパン、ベルリオーズなどと知り合い、美貌の伯爵夫人マリー・ダグー(Comtesse Marie d'Agoult)と知り合い結婚し、娘コジマ(Cosima)~ 成人して、指揮者ハンス・フォン・ビューロー(Hans von Bülow )夫人、その後にワーグナー夫人となる ~ をもうける.後にドイツのワイマールに定住して、ドイツ語にも堪能でワイマールを嘗てのゲーテ、シラーの全盛期を偲ばせる隆盛に持って行った.晩年のリストは、その精力のほとんどをワーグナーの大きな理想であった「総合芸術」に向けて費やした.ロマン派音楽をワーグナーと共に派手に行動的に表現し、宗教音楽への精進を決意し聖職に入った晩年であった. 作曲では交響詩というジャンルを確立したが、改めてリストの作品を聴き直すと超技巧ピアノ曲が数多く、演奏家にとっては演奏が至難の技であろうと改めて思った.兎に角、的確な表現ではないかも知れないが、後のワーグナーに近い作風であり、難解な作曲家ではある. 以前、あるピアノ講師から聞いた話ではリストの作品を演奏するには、手の指を強化する必要性は許より、手の指が大きいか、差ほど大きくなくても指が十二分に開かないととても演奏できないそうだ. 「パガニーニ大練習曲(全6曲)」の第3番 ≪La Campanella≫ は特に有名で、他にも「愛の夢」や「ハンガリー狂詩曲(全19曲)」の第2番や「ピアノ協奏曲第1番」が耳馴染みのあるメロディーである.しかしリストの作品は「超技巧練習曲」と銘打った曲を始め、それ以外でも本当に息つく暇もないようなリズム、テンポ、メロディーの曲が多くポリーニ (Pollini)、ポレット (Polet)、キーシン (Kissin)などの名手で聴くことが出来る今日の時代に聴くとこができ良かったとつくづく思う. 1曲だけの「ピアノソナタ ロ短調」は40歳代の作曲で、シューマンがリストに贈った「ハ長調幻想曲」に対する返礼として、リストがシューマンに献呈された作品であるが、演奏時間30分が単一楽章で構成されている.初演は音楽教師としてのリストの高弟(門下生)であるハンス・フォン・ビューローにて行われ賛否両論あったが、今日ではピアノソナタの傑作の一つと評価されている.ピアノソナタと言っても“ドラマティックな展開の華麗な曲想“でピアノによる幻想曲か交響詩と言っても良い. リストは交響詩という音楽構成の生みの親であるが、交響詩「前奏曲」と交響詩「マゼッパ」を改めて聴き直した.リストの一つのパターンである暗黒から光明~闘争~憩い~勝利といったプロセスで曲は構成されていて、大方は激しく時に静かに演奏されて行く. 「スペイン狂詩曲」には、この旋律の中にアメリカ映画のアラモの砦のメキシコ軍との攻防を描いた話題作「アラモ」(監督・主演ジョン・ウエイン)のテーマ曲と非常に似た旋律が出てくることを、私は10数年前にピアニストの演奏会で気づいている. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.
- 5/22/2022 音楽家と作品への雑感「ドボルザーク」
第6章 アントン・ドボルザーク Antonín Dvořák (1841年~1904年 62歳没) チェコのプラハ近郊のネラホゼヴィス (Nelahozeves, ドイツ語名 ミュールハウゼン, Mühlhausen) に生まれ、オルガン学校で学んだ後、チェコ国民歌劇場のビオラ奏者を務めながら、同劇場の指揮者であったスメタナからチェコ国民音楽の創造に強い影響を受けた. オーストリア政府奨学金を獲得した際に、その審査員であったブラームスの知遇を得て、作品が世に出るようになり、作風もブラームスの影響を強く受けている.アルト歌手アンナと結婚し、ビオラ奏者を止めて教会のオルガニストに就任.ブラームスはドボルザーク独自のスラブ様式を高く評価し、以後二人は終生変わらない友情で結ばれる.取り分け、ブラームスの推挙の出版社からの依頼で作曲した「スラブ舞曲第1集」(37歳時作曲)※① は彼の名を一躍有名にした.イギリスにも数回旅した順調な歩みの間に、長女を含む3人の幼児が相次ぎ死ぬという不幸に見舞われ、名作「スターバト・マーテル」※② は、この悲しみを聖母マリアに見出したカンタータである.プラハ音楽院教授にも就任し、米国のナショナル音楽院からの招きで渡米し、名曲「交響曲第9番 “新世界より“」※③ を作曲し、「弦楽四重奏曲 第12番 “アメリカ“」※④、「チェロ協奏曲」※⑤ と2年間で代表作品を次々と作曲している.他にも、「セレナード ホ長調」※⑥ も美しい. チェコの民族主義音楽はスメタナによって開拓され、ドボルザークによって国際的な広がりを見せた.スメタナが交響詩や歌劇で民族主義を打ち出したのに対して、ドボルザークはブラームスの影響が強く、積極的なチェコ民族音楽の響きは少なく、むしろ、郷愁の甘美さへの陶酔すら感じさせる. ※①「スラブ舞曲 第1集」(1878年作曲)の8曲はジムロック(Simrock)出版社からブラームスの「ハンガリー舞曲集」と同じ趣向の作品を依頼したことにより作曲.「スラブ舞曲 第2集」(1887年作曲)は第1集の成功により、その後に作曲された.民族音楽の面白さに加えて管弦楽曲として楽しめる. ※②「スターバト・マーテル」は、私が高校大学時代を通して所属していた混声合唱団倶楽部で1958年に東京のホールで全曲を歌った想い出のある曲で、改めて聴き直すと、穏やかな気持ちにさせられる大変な名曲である.「スターバト・マーテル」の作曲ではロッシーニ他の名曲もあるようなので、時間を見つけて是非一度は聴いてみたいと思う.⇒ 当時、混声合唱団で使用した楽譜. ※③交響曲第9番“新世界より“」は、ドボルザークの最後の交響曲で、特に演奏機会が多い名曲.アメリカの音楽院の校長として3年間ニューヨークで過ごした時の赴任直後に作曲された.アメリカ音楽の影響も多少感じられるが、アメリカからボヘミアへの郷愁を音で綴ったという印象の方が強い.直、「交響曲第8番」は“新世界より”に続き演奏機会が多い交響曲で、自然に音楽が流れ最もメロディーが多い名曲と言われているが、私は未だ聞く機会が少ないためか、今回の再聴では左程の共感を持てなかった. ※④「弦楽四重奏曲 第12番 “アメリカ“」は、“新世界より”と同じく、アメリカ滞在中にチェコ移民の住むアイオワ州の村で作曲された曲で、同郷の人達に囲まれ、随所に郷愁を誘う美しい旋律が満ちている私の大好きな名曲. ※⑤「チェロ協奏曲」もアメリカ滞在中の作曲で、超絶な技法のチェロと豪勢な響きの管弦楽が交響曲的に絡む作品で、古今のチェロ協奏曲中でも最高傑作の一つである. ※⑥「セレナード ホ長調」作品22は弦楽合奏からなる5楽章の作品だが、聴き心地のよい美しいメロディーが弦のみで奏でられる名曲である. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.
- 6/15/2022 音楽家と作品への雑感「スメタナ」
第7章 フリードリッヒ・スメタナ Friedrich Smetana (1824年~1884年 60歳没) チェコのパルドウビュッツ州(Litomyšl リトミッシェル)の酒造家に生まれ、単身プラハに出てピアノと作曲を学んだ.ボヘミア地方は当時、オーストリアの支配下にあり、チェコ独立革命運動が盛んで、スメタナも民族運動に加担して、義勇軍のための行進曲を書いたりしていたが、スエーデンのイエテボリに5年間難を逃れて指揮者を務めていた. 作品の中で「モルダウ」が特に有名で演奏される回数も多いが、これは連作交響詩「わが祖国」(全6曲)※①の第2曲目である.改めて全曲(演奏時間80分間)を聴き直してみると、「モルダウ」がエルベ川の上流にあたる大河の激流と小波を見事に表している名曲だと思う一方、他の5曲はチェコ民族の団結を意図して作曲されている感がして、闘争的な旋律や音響を感じる部分が多く、21世紀の現在のロシアによるウクライナ侵攻という理不尽な戦闘行為を目の当たりにしている時期でなく、平穏時に聴くと大変重苦しい感じがするだろうと思った. モルダウ川(Vltava ヴルタヴァ川)はチェコ北部に端を発し、ドイツ東部を流れ北海に注ぐ全長1091Kmの長い川.流域の主な都市はチェコのプラハ、ドイツのドレスデン、マグデグルグ、ハンブルグ.私はハンブルグに1960年代、70年代の2回に分けて5年間住んでいたので、エルベ川には色々な想い出があるだけに作品「モルダウ」を聴く度に思い出が蘇る. ※①連作交響詩「わが祖国」 1「ヴィシェフラド(Vyšehrad)」:プラハの丘の上の城の名前 2「ヴルタヴァ(Vltava)」(モルダウ(Die Moldau)):川の名前 3「シャールカ(Šárka)」:女戦士の名前 4「ボヘミヤの森と草原から(Aus Bo”hmens Hain und Flur)」:風景描写 5 「ターボル(Tábor)」:強く戦ったフス教徒の陣営の名前 6「ブラニーク(Blaník)」:砦のあった山の名前 ※②「ピアノ三重奏曲 ト短調」 各楽器の自己主張と調和とが程よく交差する民族的な旋律の曲. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.
- 9/25/2022 音楽家と作品への雑感 「ヘンデル」
第9章 フリードリッヒ・ゲオルク・ヘンデル Georg Friedrich Händel (1685年~1759年 74歳没) ドイツのハレにJ.S.バッハと同年に生まれ、ハレ大学で法律を学んだ後、当時歌劇の盛んだったハンブルグに出た.その後、イタリアで活躍後にハノーバー選帝侯の宮廷楽長になったが、間もなくロンドンに出て歌劇を上演しロンドン市民権も得て、生涯ロンドンで活躍することになる.バッハが教会音楽家だったのと対照的に、ヘンデルは劇場又は公開演奏用の作品を中心としていて、ドラマティックで色彩的な要素が強く、特に合唱曲に優れている. ヘンデルの作品を生で聴く機会は、自分の70年位前の若い頃に比べて近年は格段に少なくなっていると改めて感じた.この間にジャズ、ロック、ポップス、ラップなど若者が好む音楽が巷に溢れ、他方でクラシック音楽の生演奏を聴く機会は当時より増えたものの、マーラー、ブルックナー他の新しくステージに上がる機会が多くなった作曲家の作品に比べ、ヘンデルは求めて聴きにいかないと生では聴けない作曲家になりつつあると感じる次第だ.生で聴くにしても、当時のような宮殿の広間(Saal)や 小部屋(Raum)又は教会内で、楽器編成も当時の様式で聴くことは、日本では略不可能となってしまったと感じる.バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ハープシコードなどの弦楽器のみで演奏されるバッハ、ヘンデル時代の作品は、その端正な形式とテンポ良い曲想の運び、和声的な響きで近年に聞いても何とも聴き心地の良い音楽であると思う. しかし、クラシック音楽を好きになれない多くの人が、ヘンデルなどの音楽を聞くと直ぐに、退屈に感じ面白くないと思うらしいが、私にはその理由を説明出来ない.残念ながら、どうしようもない致し方ないとしか言いようがない. ヘンデルで先ず思い出すのはオラトリオ「メサイア」と「合奏協奏曲」だ. ※①「メサイア(救世主)」は、サー・エードリアン・ボールト指揮のロンドン交響楽団、同合唱団のLondonレコード盤で何度も聴いてきたが、今回、十数年振りに改めて聴き直すと矢張り良い.兎も角、和声とリズム、テンポが今の喧騒の世の中では貴重な精神的静寂の世界に連れ戻してくれる感じがする.特に、ジョーン・サザーランド(ソプラノ)の伸びのある高音の歌唱力には改めてその美しさに驚かされる.演奏はハープシコード、オルガンの音の上に、乾いたトランペットの音色が清々しく響き、歌手と合唱との調和が何とも美しく響く.長編のオラトリオ「救世主」の最後を飾る終末合唱(シュルス・コール)は、あらゆる点から、最も感動的な合唱で、規模も壮大で、まるでミケランジェロの壁画に生命を吹き込んだような名曲と思う. 他に、ザルツブルグのモーツアルト劇場でロバート・ウイルソン演出の公演(2020年1月)ビデオを鑑賞した.メサイアの演技を伴っての合唱、歌唱と管弦楽の形での舞台を観たのは初めてだが、セットや衣装は現代の意匠から遠く離れたSF的な無機質なものであった.音楽だけを聴いて空想の世界で音をイメージするのと、舞台上の具象化された人物などを観ながら音楽を聴くのとは、全く脳裏に映るイメージが違ってくるので、宗教曲「メサイア」は合唱、歌唱、管弦楽だけでの演奏会又はレコードやCDで鑑賞するのが私は断然好ましいと思った. ※②「合奏協奏曲 作品6」:(演奏:イタリア合奏団)を改めて通して聴いた.「メサイア(救世主)」と並んでヘンデルの代表曲だと感じた.「合奏協奏曲 作品6」を約3時間聞き通すのは、生では無理でもCDやレコードで十分に楽しめる長さだ.ワイングラス片手に涼しいそよ風に当たりながら聴けたら申し分のない曲だろうと空想を広げた. ※③「王宮の花火の音楽」:久しぶりに聴く、管楽器群の響き、特に高音のトランペットとホルンの透き通るような響きは悠久の世界観に漲る贅沢感がある. ※④3つの二重協奏曲 第2番ヘ長調(6楽章)及び第3番ヘ長調(6楽章)(Concerti a due cori)::上記に同じ.今の時代に又、直ぐに聴きたくなる音楽. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記、表にした.
- 3/11/2024 音楽家と作品への雑感「フォーレ」
第11章 ガブリエル・フォーレ (Gabriel Urbain Fauré) (1846年~1924年79歳没) フォーレはフランスの南西部のパミエ(Pamiers)生まれ. 音楽学校でサン-サーンス (Camille Saint-Saëns) に学びその影響でをうけた.当時はワグナー、ベルリオーズが主流であったが、ドビュッシーに先立ってフランス音楽の復興、隆盛の基礎を築いた. ※レクイエム:3大レクイエムと言われるモーツアルト、ヴェルディ、そしてフォーレの中でも、私が一番好きなのはフォーレのそれであり、演奏はアンドレ・クリュイタンス指揮のパリ音楽院管弦楽団の録音は≪永遠の至福と喜びに満ちた解放感≫として死を表現した名曲・名演奏だと思う. 私は学生時代に混声合唱団に所属していて、フォーレとモーツアルトのレクイエムをステージで歌ったことがあり、それ以来、愛聴している名盤レコードだ. 3曲目のSanctus⇒ Pie Jesu(ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスの歌声が最高!!) ⇒ Agnus Deiに繋がる ⇒ Libera me(ディートリッヒ・フィッシャーディスカウの素晴らしいソロ)⇒ in Paradismusで天国に昇華. 今回の雑感記録に際して、改めて聴き直した作曲家の作品リストをご参考までに下記の表にした.
- 12/16/2023 APA コンサート、武蔵野市公会堂
Brahms op114 を 古泉元子さん(ピアノ)と 齋藤肇さん(チェロ)と弾く.来年4月13日第6回国際音楽祭に於いて同じ曲を小金井宮地楽器ホールで米国で一緒にピアノ・トリオを弾いているチェリストのDr. Steffen Luitzと弾く.ピアノは前回 Mendelssohnでご一緒したプロ級のピアニスト鳥井一行さんにお願いした.今から楽しみ.
- Copy of 8/15/2023 フィルム・レビュー「バーベンハイマー」
2023年は『バーベンハイマーの夏』という人もいるかもしれない.まだご存じでない方のために、このブロッグに下記2本の映画が世界的なセンセーションを引き起こした現象に対する私の見解を投稿した. 7月に『バービー』と『オッペンハイマー』いう2本の高額予算を獲得して制作された映画が同時に劇場公開された.どちらも大ヒットしており、どちらもとても良い映画だと思う.まったく異なる2本の映画を観ようと米国全土でファンが劇場に詰めかけている.どちらもハリウッドが提供できる最高のタレントを駆使し、どちらも観客を感動させているが、その理由は全く異なる. バービー PG-13指定 出演: マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング、ケイト・マッキノン、シム・リウ ジャンル: コメディ、ファンタジー、アドベンチャー 監督: グレタ・ガーウィグ 脚本:グレタ・ガーウィグ、ノア・バームバック グレタ・ガーウィグが実生活のパートナー、ノア・バームバックと共にこの映画の脚本を書いたときは、恐らく二人とも、アイコン人形を描いたこの映画がここまでの成功をもたらすとは想像できなかったと思う. 有名で賞賛されている作家だったため、彼らはこの映画に約1億4,500万ドルという高額の予算を獲得することができた. また信じられないことに、劇場公開からわずか 1 か月後、この映画はすでに 10 億 7,700 万ドルの興行収入を記録した. なぜ? そして、どうやって? 優れたキャストと十分な予算を備えたこの映画は、公開前に多くの誇大宣伝を引き起こした.確かにこれは初期の成功の一部によるものだと思が、それ以上の何かがこの映画にはあると思う.現在、我々は非常に深刻な世界に生きている.よって、今、人々はただ笑いが必要なのかもしれない.また、子供の頃を思いだすノスタルジックな、愛されている人形のようなものは確かに人の心をつかむ方法なのではないか.少なくとも映画の最初は、バービーはまさにそのノスタルジックな対象である.映画が進むにつれて、女性(そして男性)が過去と今日に直面してきた問題も思い出させせる.この映画は風刺と人間性の完璧なバランスが取れていると思う.バービーがバービーの世界から私たちが今住んでいるまさに現実の世界へ旅立つにつれて、たくさんの笑いがあり、また考えさせられる点もたくさん提供する映画だと思う. 予告編: https://www.youtube.com/watch?v=pBk4NYhWNMM オッペンハイマー 「プロメテウスは神々から火を盗み、人間に与えた.そのために彼は岩に鎖でつながれ、永遠の拷問を受けた.」 R指定 出演: キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー ジャンル: ドラマ, 伝記, 歴史 監督: クリストファー・ノーラン 脚本:クリストファー・ノーラン、カイ・バード、マーティン・シャーウィン この映画はこの不気味なギリシャ神話からの引用で始まり、映画中オッペンハイマーの劇的な生涯を暗示している. この映画は、クリストファー・ノーランと映画の脚本を共同執筆したカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンが書いた本『アメリカン・プロメテウス:J・ロバート・オッペンハイマーの勝利と悲劇』を基にしている. この映画は、オッペンハイマーが成人してからの人生に焦点を当てており、その中にはニューメキシコ州ロスアラモス近くに建設された秘密兵器研究所の所長を務めたマンハッタン計画での役割も含まれている.そこで、何万人もの人々を即死させ、太平洋戦争を終結させた兵器の核反応をどのように利用するかを、オッペンハイマーを中心に他の多くの世界中から集められた時代の最も輝かしい科学者達が頭を悩ましていた. この映画を観て驚いたのは、自分が「原爆の父」のことをこんなにも深く考えてしまったことだ. 正直に言うと、この映画を見るまで、私はオッペンハイマーという人物についてほとんど知らなかった. 私は彼が核兵器創造に貢献した恐怖だけを知っていた.この映画で非常に巧みに描写された彼の人生に対する個人的および外部からのプレッシャーを見て、今では私は彼について全く異なる理解を持っている. 『オッペンハイマー』は 3 時間という長い映画なので、そこで取り上げられたさまざまなトピックについて詳しく説明するのは困難であるが、私にとっては完璧な映画であった. オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーは特別な評価に値すると思う. 彼はタイトルロールで素晴らしく、オッペンハイマーに似ているだけでなく、その役を演じるのに必要な強さと人間性も備えている. 素晴らしいキャスト、リアルなセットや衣装、効果的なサウンドなど、映画全体がこれ以上ないほど素晴らしい出来であると思う.クリストファー・ノーランがほとんどの映画監督と異なる点の 1 つは、彼が特殊効果に依存していないことで、彼はカメラを通して彼の望むものを手に入れる. 彼の熟練した技術は各フレームに明らかであった. バービーとオッペンハイマーの目覚ましい成功と、その主題がどれほど異なっているかを考えるとき、私は彼らを同一としているものの重要性に衝撃を受ける.我々は私たちの過去を思い出す必要があるということだ. 人生のすべてのことと同様、良いことも悪いことも覚えておくことが私たち人間を人間たらしめるのだと思う. 予告編: https://www.youtube.com/watch?v=uYPbbksJxIg
- 4/2/2023 日本の春(彦根城の桜)
日本に居られるのに、掲題のメールを送るのも変ですが、前信の「京都・円山公園の枝垂れ桜」と対になっている気がするのでお送りしておきます. 桜の季節の彦根城を観ようと思っていたことを漸く実行に移すことが出来ました.昨日の日曜日は好天にも恵まれ、片道2時間の列車に揺られて出掛けてきました. 彦根城は外観の美しさと城本来の機能である軍事面にも優れていることで、姫路・松本・犬山・松江と並んで国宝に指定されています.桜とも似合う美しい風景があちこちに観られました.
- 3/30/2023 京都・円山公園の≪枝垂れ桜≫
京都・円山公園の≪枝垂れ桜≫を観てきました. 現在の大木は二代目で、初代は昭和22年(1947)に樹齢220年で枯死してしまいましたが、その初代の種子から大事に育てられた桜が、樹齢約80年を数える大木に成長しています. 満開の時に好天の下で観たいと思っていましたが、コロナ禍で叶わず、本日やっと念願かなって満喫してきました.